天才【BTS】 (ページ10)

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ふっと意識が浮上する感覚がした。未だに重い瞼を少しずつ開けてみると、いつもより物が少なくなった部屋にいた。自分の人とは違うところ。時計を見ると、自分の記憶にある日付から丸三日経っていた。眠気が収まらず、頭がボーとする。

そういえば、人が来るんだったなとか
新しく家を買ったんだったとか
仕事休んでしまったなとか

思うことはいろいろあるけれど、体は言うことをきかず寝すぎたからこその気だるさが体と脳を侵していく。
窓の外に目を向けると、雲と雲の隙間から溢れる朝日が今日の訪れを知らせていた。

「んん～」

数分経って幾分かマシになった眠気を完全に振り払うためにグッと伸びをした。
朝ごはんにはこちらに来てからよく食べるようになったシリアルを。
お風呂にお湯をため、三日ぶりに湯船に浸かり、ソファに寝たことによって凝った体を癒す。

お風呂から上がれば考えることは一つ。次に作る曲のこと。

何を題材にして作ろうか。音楽の中は限りなく自由で、自分の表現したいことを自分の好きに表現できる。しかし、音に決まった意味はないから本当に自分が表現したいことは自分にしかわからない。だから、それに歌詞をつけることによって、音の真意を伝えようとする。

僕には暖かく無条件に愛情をくれる家族もいなければ、心から愛せる人もいない。親友と呼べる友人も片手で数えられるほどしかいない。そんな僕に人に伝えたいことなんかあるのか、自分でもわからなくなることがあるけど、それでも何か伝えたいことがあるから曲を作っているんだろうな。

もやもやしたイメージを少しずつ形にしていけば、美しいメロディーが溢れ出す。グランドピアノがある作業室に入り、そのメロディーを楽譜におこしていく。

やっぱりこの瞬間が一番幸せだな。嫌なことも苦しいことも、全部忘れて、ただただ自分の音楽を奏でることに集中する。