天才【BTS】 (ページ1)

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母は天才ピアニストで父は天才作詞作曲家。

お腹の中にいる頃からたくさんの音楽を聴き健やかに成長してきた僕にとって音楽は僕の全て

両親は忙しく、家にはほとんどいないし、僕に対して無関心だったけど、それが寂しいとは思わなかった。

理由は単純で、自分にとって両親にかまってもらうよりも部屋にこもって楽器を触っている時間の方がよっぽど楽しかったから。
幸いにも両親は音楽関係の仕事、家は楽器で溢れかえっているし、お金に困ることもない。

自分で本を開き、独学で音楽について学んでいくうちに自分が普通じゃないことに気づいた。

一度見たこと、聞いたことは一瞬で記憶できるし、忘れない。
人と関わることが少なかった僕は何が普通で何が普通じゃないのか当時は分からなかったが、今なら分かる。

自分はサヴァン症候群であるということ。
人と関わるのが苦手なのはそのせいだ。

何でも覚えてしまう自分にとって、勉強は退屈なものだったし、楽器を演奏することもだんだんと退屈になった。
唯一飽きることがなかったのはピアノと作詞作曲で、こんなところで両親と似ているなんてことが証明されたようで不服だったけど、それでも飽きない。

将来はそれを自分の職業として生活していきたい。
ただ、そうするにはこの国は少し窮屈で、息のしづらい国だった。

だから、１５歳の春、アメリカへ旅立つことを決意した。
心のどこかで、この国に帰ることはないかもしれないと思いながらも。

「父さん、母さん、僕、アメリカに行こうと思うんだ。」

『ああ、そう。』

帰ってきた言葉は残酷で、やっぱり僕はこの人たちに何かを期待していたのかもしれない。
じゃなきゃこんなに胸が痛いはずないから。