白昼夢は闇を見せない (ページ5)

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#5ジョンハンページ5

「はあ……こんなことあるのかよ」

待機しているはずのバンが無かった。

無事収録も終わり、すぐさまバンに向かおうとしたが、直前にプロデューサーに呼び出しをくらってしまった。

たった30分拘束されただけで、置いてかれるなんて。

それにアイドルを単独行動させるなって、散々言ってたのはスタッフのクセに……。

文句のひとつでも言ってやろうと思ったけど、それさえも面倒なので「迎えに来て」と連絡をして待つことにした。

マネヒョンは、「すぐに警備員を向かわせる」と返事がきた。

俺をひとりにしないための対策だろう。

そんなに大切にしたいなら、なんで置いて行ったんだ。

近くにあったベンチに腰掛け、音楽を聴きながら待とうとした時だった。

「ん……？」

目の前に人影を感じ、スマホから目線を上げる。

そこにいたのは、真っ黒な人だった。

いや、詳しく言えば……人型の影だ。

影だからか、体の向こう側が透けている。

明らかにこの世に存在しているとは思えない何かに、驚いた俺は思わず立ち上がった。

「なに……？」

逃げなければならない。

そうしなくちゃいけないのに、恐怖からか体が動かなかった。

影が俺に手を伸ばす。

瞬間、あの事件を思い出した。

アイドルが連続で失踪、殺人されている事件……。

その犯人はきっと。

「や、め……」

情けないことに震える声で抵抗しようとした時。

「死ね」

誰かの声が聞こえたのと同時に、目の前の影が消えた。