#40あなた ページ40
数日後。
ジョシュアさんの言う通り、テヒョンは目を覚ました。
目を覚ましたらわたしがいたから、彼は驚いていたようだけど、一瞬で何かを察したようで、「君が」と小さく呟く。
「ずっと……君の顔が頭から離れなかった」
「シャドウの記憶があなたの記憶と混同しているのでしょう」
「……なんで知ってるの？」
まだ困惑しているであろう彼に、ゆっくりと簡単にわたしとシャドウの関係について話した。
彼は納得したようだったけど、混乱してしまったようで頭を抱えてしまった。
「俺は……君に謝りたかった」
「え？」
「キム・ヨンス。彼が死んだのは俺のせいなんだ」
彼は静かに語り始める。
12年前、彼はヨンスと同じ事務所で練習生として所属していた。
その時からヨンスはスター性があり、講師も目に見えてひいきするくらいだったそう。
でもテヒョンは2歳離れた年上の彼を本当の兄のようにしたい、尊敬していたのだと。
そして、テヒョンは彼と同じグループでデビューするはずだったがヨンスは先にソロデビューし、数々の栄光を手にした。
2年後、テヒョンはBTSとしてデビューしたが……しばらくは鳴かず飛ばずの生活。
いつしか彼は、あっという間に輝かしい道を歩んでいるヨンスに嫉妬し……。
シャドウと契約をしてしまったのだそう。
そしてその三日後。ヨンスは死んでしまった。
「シャドウは最初からヨンスを狙っていた……。俺はそういうつもりは全くなかった。ただただ、成功したかっただけなんだよ……」
知らなかった事実を突きつけられ、正直平常を保っていられそうになかった。
なるほど……ヨンスを喰らったシャドウは、テヒョンに憑いていたんだ。
そして、敵を討つことができた。
「君は、ヨンス兄さんの恋人だったんだろ？」
その問いかけに、肯定も否定もしなかった。
仕事に、私情を挟んではいけない。
「君の気が済むなら、俺を殺してもいい……。俺は、取り返しのつかないことをしてしまったんだ」
「……今言ったことが本当であれば、わたしは何と言ったらいいか分かりません。それくらい、混乱しています」
「……ああ」
「でも、わたしはあなたのせいでヨンスが死んだとは思っていません」
目を大きくさせる彼。
「今あなたが人気なのはシャドウの力ではなく、あなた方の力です。でももし、少しでも彼に悪いと思っているのなら、少しでも多くの方を笑顔にしてください」
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作者名：菜々子
| 作成日時：2022年11月22日 19時
