#32ジョンハン ページ32
「バーノンさん。ジョシュアさんたちはこのことを知っているんですか？」
Aになんと返答すればいいのか分からず、彼に話を振ってしまった。
彼は小さく頷いた。
「長い付き合いなので、成り行きで」
「そっか……」
何も知らなかったのは、俺だけだった。
「先に行ってますね」と気を利かせたバーノンはヘリの中へと戻っていく。
Aと2人っきりになって、話すことは色々あるはずなのに……沈黙が流れる。
「もう……家族の元に戻らないのか」
静かに尋ねると、妹は首を縦に振った。
「死んだ人が生き返るなんて、あり得ない。今更戻ったって、混乱するだけよ」
「母さんは……未だにお前の幻を追っている」
あの時、父と再会したとき怖くて訊けなかったけど、今もそうだと思う。
きっとAが戻ってくれれば、俺たち家族は再構築できるはず。
「お前の幻を追って、そのせいで家族は壊れた。俺じゃ……母さんは治せない」
「……なら、これを使って」
Aは持ってきてもらった鞄の中から、一枚の紙を差し出す。
そこに記されていたのは、国がやっている電話相談窓口の番号だった。
なんだよこれ……。
「わたしの名前を出せば、いい医者を紹介してくれる。母さんもそこに行けばきっと」
「ふざけんなよ！」
俺は再び妹の胸倉を掴んだ。
「こんなもんじゃ、母さんは治らない！ お前は何も知らないからこんなことが出来るんだよな！？ 母さんがお前のせいで壊れて、父さんは自分の人生全てを母さんに捧げてる！ 母さんと父さんのことはどうでもいいのかよ！ ……よくも……こんなことできるよな……」
「……わたしは」
Aは冷静な目で、俺を見る。
もうコイツは、あの時の……俺の知っている妹ではない。
「もう無関係の人間だよ。
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作者名：菜々子
| 作成日時：2022年11月22日 19時
