#31ジョンハン ページ31
「A……。お前、生きていたのか？」
まさか、ずっと俺の傍で護衛していた人間が……死んだはずの妹だったなんて。
全く気付かなかった。こんなに近くにいたのに。
この状況が呑み込めないし、たくさん疑問が浮かんで脳が混乱している。
思わず頭を抱えた。
「……ごめん。こうするしかなかったの」
「どうして……」
「わたしが、家族より恋人を選んだからよ」
「え……？」
ソラ……Aは、小さく息を吐いた。
「キム・ヨンス。あなたが好きだったアイドル、覚えているよね？」
「うん……」
「わたし、その人と付き合ってたんだ」
「……は！？」
ただでさえ混乱しているこの頭に、爆弾を投げつけるわが妹。
いよいよ頭痛がしてきた。
「12年前くらい、若者にカツアゲされていたヨンスを助けたのがきっかけだった。その時彼はまだ駆け出し中のアイドルだったし、わたしは不良少女で……って、知ってるよね」
「まあ。その頃から家出しがちだったしな」
「そう。んで、彼が世界中で人気になるまではそう時間はかからなかった。ワールドツアーをすることが決まって、それくらいの時期にわたしたちは付き合ったんだ。結婚まで考えてた。だから、わたしは家に戻ってちゃんと通学して、卒業して……彼の恥にならない人間になろうと思ってた」
なるほど……。だから例の事件が起こる前、コイツは真面目に学校に通っていたのか。
「……でも、ヨンスは死んだ。シャドウに体を食い尽くされていた」
妹は拳を震えるくらい握りしめ、何かに耐えるようだった。
「その時に、ジョシュアさんたちに出会った。そしてシャドウを討伐して回ってるってことも……わたしは、復讐のために今の組織に入ったんだ。ひとつ残らず、シャドウを殺してやるって。その覚悟として、わたしは……死んだことにしてもらった」
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作者名：菜々子
| 作成日時：2022年11月22日 19時
