#3ジョンハン※少し手直し ページ3
現在―――。
「ヒョン、来週だっけ。妹さんの十回忌……」
外に出る支度をしていると、そう声をかけてきたミンギュ。
俺の妹が10年前に亡くなったことは、メンバーはもちろん、マネージャーもみんな知っていた。
だからこの時期が近づくと、気持ち悪いくらいみんな俺を気遣ってくれる。
「……出かけてくる」
「ひとりじゃ危険だよ。最近物騒な事件が起こってるし……俺もついて行こうか？」
「大丈夫。すぐ戻るよ」
宿舎を出て、しばらくその辺を散歩する。
十回忌……もう10年経ったのか。
あの日、俺が家から出て行った頃から俺は、両親と連絡を取っていなかった。
偶然にもその日に今の事務所にスカウトされて、衣食住に困らないだろうからと、その話に飛びついた。
その当時、俺は未成年だったから両親に承諾を取らなければならず、スタッフさんが両親と俺と社長と4人で話し合う場を設けてくれたが……。
俺は、「一刻も早くデビューしたいから練習させてください」と無理を懇願し、避けてしまったのだ。
これでよく、父は承諾してくれたな……と今でも思う。
今思えば……母に会いたくなかったからだろう。
会ったってどうせ、Aのことだけ聞くんだろうから。
だからと言って、親孝行をしない理由にはならないので、毎月仕送りをしていた。
少しでも足しになればいいけど。
「そろそろ戻るか……」
この日を迎える度、なんとも言えない気持ちになる。
ある程度、気持ちの切り替えは出来たような気がするけど……自分でもよく分かってなかった。
妹とは仲が良かったし、おそろいのビーズのブレスレットを身につけていた。
あの日……Aの最期の姿を見た時もそうだ。
「……A」
俺も未だにそれを身につけている。
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作者名：菜々子
| 作成日時：2022年11月22日 19時
