#13ジョンハン ページ13
「ジョンハンお兄さん、大好き〜！」
「ありがとう。俺も大好き」
サイン会が始まった。
彼女のことを気にすることが出来ないほど、目の前のファンの対応に追われ、シャドウのことなんてすっかり頭から抜けていた。
ひと段落したところで、水を飲みつつ、彼女の様子をうかがう。
いつもは無表情なのに、この時は何故か険しい顔をしている。
人の目が多いし、騒がしいところが苦手なのかな、としかこの時は思っていなかった。
順調にサイン会は進んでいき、最後のファンが目の前に来た。
この日のサイン会の進行として、サインを終えたファンは会場を出ていく形なので、この場には数人のスタッフとひとりのファンという空間になる。
その時、彼女が動いた。
「それ、なんですか」
素早く俺の前に立つソラ。
そして、ファンの女性の手首を掴んだ。
彼女の手は、ジャケットのポケットに入っていた。
「ジョンハンさんにプレゼントを……」
「見てましたよ。催涙スプレーですよね」
「……ッチ」と舌打ちをする女性。
大人しく出ていくのかと思いきや、片方のポケットから何かを取り出すと、傍にいた男性スタッフの背後を取って、首元にナイフを突き立てた。
よく見れば、彼女の指の先から黒い影が出ていて、それがナイフの形をかたどっている。
まさか……と動揺して体が強ばった。
が、ソラは俺の首根っこを掴むと、自身の背後に移動させたのだ。
「まさか人間に取り憑いてたとはね」
「ソイツを渡せ。コイツを殺すぞ」
スタッフを人質にとっている女性の声色は、しゃがれた老婆のようなものだった。
ソラは懐に隠していた短剣を取り出すと、鞘を外して床に投げ捨てる。
というか……シャドウはアイドルがひとりの時しか狙わないはずなのに……何故？
「そう。別にその人殺していいよ」
「は！？」
そう声を上げたのは俺だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 176人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：菜々子
| 作成日時：2022年11月22日 19時
