#12ジョンハン ページ12
とあるブランドのイメージモデルを務めている俺は、商品購入者特典限定のサイン会を行うことになった。
ソロの場はそれなりに慣れているけど、護衛のソラがいるから……なんとなくソワソワしていた。
控え室でも彼女はついてきて、部屋の隅で待機している。
その間、俺たちに会話はない。
彼女以外のスタッフならどうってことないけど、この時何故か俺は彼女になにか声をかけなけらばならない気がした。
「ソラ」
「はい」
「毎日そんな風に立ちっぱで疲れないの？」
はあ、もっと気遣える言葉でもかけてやればいいのに……。
「あなた方の方が、疲れますでしょう」
「それは分かんないけど……隣、座れば？」
ソファーの隣を軽く叩くけど、彼女は首を降って拒否した。
当たり前の反応だ。
「あと……怪我、大丈夫？」
「もう治りましたよ」
「骨折したのに？」
「人より治癒力が高いんです」
治癒力とかそういう話じゃないような気がする。
怪我の治りが早いメンバーもいるけど、さすがに骨折となれば完治に1ヶ月以上はかかっている。
すると、ソラは急に俺に近づいてきた。
かと思うと、いきなり俺の耳元に手を伸ばす。
ぐっと彼女と距離が近づき、不覚にも心臓が大きく飛び跳ねた。
何のつもり……と言葉が出る前に、彼女は何かを摘んだまま俺から離れる。
彼女が摘んでいたのは、小さなシャドウだった。
そんな小さなものが……と思っているうちに、ソラはシャドウに刃を突きつけて首から真っ二つに切り裂いた。
砂のような姿になって消えていくシャドウ。
彼女は役目を終えると、定位置である部屋の隅へと待機した。
「ありがとう……」
なんか恥ずかしくなってしまった。
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作者名：菜々子
| 作成日時：2022年11月22日 19時
