スパイになれなんて聞いてません！4

#164 ページ14

相変わらず同じ景色が続く廊下。

こんなところ、長時間いたら頭がおかしくなりそう。



「訊いてもいいですか？」



ふと、ジニさんがわたしに尋ねた。



「なんでしょう？」

「ここを出たら、一緒にパフェを食べに行ってくれませんか？」

「パフェ？」



どうして今、そんな事を訊くのだろうと、不思議に思うと。



「こういう約束をしていれば、必ず出られるような気がするんです」



そう言い、ジニさんは小さく笑った。

なるほどね、とよくある映画のワンシーンを彷彿とさせるな、と思った。

いや待って。



「それって。主人公が死ぬ前兆のセリフみたいじゃないですか？」



ほら。

特攻隊員が、家族を離れる時によく「必ず帰ってきます」と言って帰ってこないパターンのアレ。

そんな約束をしたら……でも。



「……パフェ食べに行きましょうね」



そう言うと「ありがとう」と彼女は嬉しそうに笑った。

そんな事は関係ない。

わたしたちは生きてここから出るという強い意志があるのだから、そんなお決まりのパターンは跳ね返してやる。

しばらく歩いていると、気づいた事があった。



「今、わたしたち一直線に歩いてません？」



ジニさんに言われて初めて気づいた。

そういえば、しばらく角を曲がっていない。

まるで、なにかに導かれるかのようにわたしたちは真っ直ぐ歩いている。

もしかしたら、罠にハマってしまったのかもしれない、と考えたけど、今更引き返すわけにもいかない。



「大丈夫ですよ」



不安に思っているのが、彼女にも伝わったらしく、わたしの手を握ってくれた。

「ありがとう」と少し安心を覚えたわたしは、思わず顔がほころぶ。



「なにがあっても、Aさんが守ってくれるって信じています」

「……約束します」



わたしは強く彼女の手を握った。

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