スパイになれなんて聞いてません！3

#104 ページ4

ドラッグストアで包帯を購入し、帰路についていると。



「Aちゃん」



聞き覚えのある声に、思わず足が止まる。

振り返ると、小さく手を振っているチャンギュンさん。

わたしはチャンくんに先に帰るように伝えると、彼に駆け寄った。



「この間はどうも。どうしてここにいるんです？」

「会社帰りなんだ。この間のお礼、言い忘れていたね。あの時はありがとう」

「いえ。元気そうでよかったです」



あのぅ、と帰れと言ったはずのチャンくんが会話に入ってきた。



「失礼ですが、Aの知り合いですか？」

「そうです。Aちゃんは大学時代の後輩で。僕はチャンギュンと申します」

「僕はチャンです。よろしくお願いします」



笑顔で握手を交わす2人。

なんだ、チャンくんの野郎、首を突っ込みやがって。

わたしは眉をひそめた。



「僕、Aの友だちなんです。最近知り合ったばかりで。ねー？」



チャンくんは笑顔でそう言うけど、瞳では「後から事情を訊くからな」と圧を見せる。

わたしは笑いながら「そうなんですよー」と言う。



「へえ。可愛いお友だちで」

「それじゃ、僕たち急ぎの用があるので！」



チャンくんは勝手にそう言うと、わたしの腕を引いて帰路とは違う道へと入っていった。

ああ、これは全て吐かないと離してもらえないパターンだ。

#105→←#103

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す