スパイになれなんて聞いてません！

#36 ページ36

その場にいてもたってもいられず、道なりに進んで行くと、気づいた。



「……いや、留まっておくべきだったかな」



落下した場所にじっとしておくほうが良かったと思う。

そうすれば、もしかしたら誰かがまたわたしと同じ場所のギミックを踏んで助けに来てくれたのかもしれない。

ああ〜、とわたしは叫んだ。

昔からこういう事がある。

よく考えないで行動してしまう。

こんなの、考えたら分かる事じゃない。

動いたら発見が遅れる。

山とかで遭難した時にも、その場を動かないっていうのが鉄則なのに……！！

今度こそ終わった。

無線が使えないという事は、なにかしらの影響で全ての電波が使えないって事でしょ。

仮にみんなが助けに来てくれると予想して……バラバラに捜索に行ったら、戻ってこれないメンバーが出てくるかもしれない。

組織に重要な人間が、だよ？

それなら、新人で使えない人間がいなくなったって、組織には影響が出ないし、死因もミンヒョンさんと同じ失踪したという事になるだろうし。



「うう〜……」



情けない、涙が出てくる。

このままここでじっとしたまま、死を待つの？



「うわぁああーん……ん？」



誰もいない事をいい事に大声で泣いていると、ふと、微かな光が上から差し込んでいる事に気付いた。

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