* ページ22
.
.
.
「メス。」
目の前の患者があまりにも意識がなく焦る。
開胸してもし大動脈解離を起こしていれば、
手の施しようがない。
「開胸器。」
「ヌナ。もし、大動脈破裂だったらどうしますか?」
「どうすると思う?」
「今まで大学で習ってきたことは、他の出血源を除外して急速輸液をして拍動を制御する。」
「そういうこと。でも、大動脈破裂でも色んな症例があるよね?」
「はい。もし、これが*大動脈解離や*胸部大動脈瘤、*食道破裂などの症例があります。」
「そうね。でも、出血源を見ると食道破裂ではなさそうね。そっち、少し広げてくれる?」
「はい。」
スングァニに開胸器を付けた左側を広げてもらう。
中を見ていくと、数ある症例と似たようなものだった。
“やっぱり” 思った通りだった。
大動脈解離だ。
厄介な病気であり助からない。
「まずい。大動脈解離を引き起こしてる。」
「ケリーで血管を挟みますか?そうすれば、少しは進行を遅らせられますよね?」
「いや、その方法は使えない。大動脈解離を引き起こすと、病院に着くまでに死亡する。」
「だったら、、!」
「…諦めよう。この患者は助からない。」
「そんな…!もしかしたら何かいい方法があるはずです!」
「スングァナ。大動脈解離は一度引き起こすと死に至る。どれだけ私たちが治療に専念しても、進行を遅らすだけ。何しろここにはオペ室にあるような、手術道具や薬品、機器はない。もしここで失敗すれば、もう可能性はない。」
「でも…」
「気持ちは分かる。だけど、私たち医者はできる限り多くの患者を短時間で助けなきゃいけない。救命ならなおさら。1人の患者に執着して、感情的になるのは良くない。助けられる生命を確実なものにしなさい。」
スングァニの言いたいことは分かる。
私たち医者は “生命の危機に迫っている患者さんを一刻でも早く助けなければいけない” ということを。
でも、私たちの腕には限界がある。
医者は諦めなければならないこともある。
どれだけ助けたい生命があっても。
多くの生命をたくさん助けなきゃいけない。
だから医者は感情を患者に写してはいけないんだ。
___________
*大動脈解離: 大動脈の壁の内層が破れて壁の中間層から剥がれる病態。
搬送中に20%は死亡する。
*胸部大動脈瘤: 大動脈から胸部を通過する部分の壁に膨らみが生じた状態のこと。
221人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Seoyon(プロフ) - あみだけどうぉぬよんのtastyが忘れられない人様 コメントありがとうございます。 貴重なご意見ありがとうございます。看護師の意味で略したんですけど、勉強不足ですね…これは。すみません、ご指摘ありがとうございます^ ^ (2020年12月11日 11時) (レス) id: 7501db6040 (このIDを非表示/違反報告)
Seoyon(プロフ) - sky様 コメントありがとうございます!このお話を見つけていただきありがとうございます^ ^ そういっていただけて嬉しいです!とても励みになります。ありがとうございます^ ^ (2020年12月11日 11時) (レス) id: 7501db6040 (このIDを非表示/違反報告)
あみだけどうぉぬよんのtastyが忘れられない人(プロフ) - 医療系の話、セブチで始めてで楽しく読ませてもらってます!…一つ気になったのですがNCは看護用語でnon-contributory特記事項なし、みたいな意味でもしナースの意味で表示するんだったらnurseでNSのほうがいいかと思います! (2020年12月11日 10時) (レス) id: 9d983dd561 (このIDを非表示/違反報告)
sky - 医療系のお話が好きなので,セブチメインでのお話を見つけ,とても嬉しいです!内容も面白く,一気に読んでしまいました!これからも更新頑張ってください!お話楽しみにしてますね!! (2020年12月11日 0時) (レス) id: 31a51e30b3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Nathu | 作成日時:2020年11月30日 15時