FearⅣ (ページ10)

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「それなら……」

しかし、溢れてしまった心の声が留まる事は出来ず、ついに口にしてしまった。

「お願いします。わたしを……吸血鬼にしてください……」

ウォヌさんと同じになれば、ヤツらはわたしを諦めてくれると考えた。

だけど、それは禁忌だった。

分かっていた……。ウォヌさんに無理なお願いをしている事くらい。

だけど、いつ終わるのか分からないこの争いを終わらせるためには……原因であるわたしが人間でなくなればいい。

「ごめん、A……。君に辛い事を言わせて、ごめん……」

わたしを抱きしめる彼の腕が、震えていた。

泣いているのだろうか……。

「君には人間でいてもらいたい……。人間で生きて、幸せになってほしい。禁忌がなくても俺は迷わず君が人間でいる事を望むよ」

「ウォヌさん……」

「もう少しの辛抱をしてほしい。俺が君を守る」

わたしは間違っていたのかな。彼の気持ちも知らず、自分の思いを一方的に押し付けて、彼に辛い思いをさせてしまった。

こんなにも、わたしの事を思ってくれているのに……。

「絶対に解決してみせるから、君は何も心配しなくていい」

「でも……無力です」

「そんな事ない。君がいてくれれば、俺たちは安心できるんだ」

彼は優しくわたしの手を握った。

人肌程の温かい手だった。