FearⅣ (ページ9)

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例の騒動により、わたしが気になっていた事を訊きそびれてしまった。

それに、ウォヌさんの手を振り払うなんて酷い事をしてしまった罪悪感にさいなまれていた。本当に悪い事をしてしまったと思う。

ベッドの上で両膝を抱え、彼が帰って来るのを待っていた。

扉を叩く音が聞こえたので、返事をするとウォヌさんが入ってきた。

「A。今、大丈夫か？」

「はい……」

彼はわたしの隣に椅子を持ってくると、そこへ腰かけた。

「さっきはごめんなさい」

「何の事だ？」

「強く手を振り払ってしまいました」

「そんな事、気にしないでいい」

彼はそっと、わたしの頭を撫でた。

「俺の方こそ、ごめん。君に隠し事をし過ぎてしまった」

「……わたしは何を言われても受け入れます。だから、今、周囲で起こっている事を教えてください」

そう言うと、「分かった」と彼は静かに教えてくれた。

「今俺たちが戦っているのは、例の書に載っていない吸血鬼たちだ。つまり、教育をされていないからそこに載っていない。ヤツらは君を狙っている。君は稀有(けう)の血と呼ばれる、吸血鬼なら誰もが欲しがる幻の血と呼ばれるものを持っている」

「そのせいで、わたしを襲おうとした吸血鬼がいたんですね……」

「ああ。教育を受けていないヤツらに君の匂いは危険だ。狂わせてしまう程の甘美で魅力がある」

「……わたしのせいで、みなさんが危険な目に遭っているんですよね？」

彼は少し目を大きくさせた。

わたしのせいで、彼らの平和だった日を脅かしている。

「わたしが生きている限り、彼らはわたしを狙って、一緒にいる皆さんに迷惑をおかけしてしまう……」

「A。俺たちは望んで君と一緒にいる。君が責任を感じる事は無い」

彼はわたしの両肩を掴んで、真剣な眼差しでそう言う。

自分の体にそんなものが流れているとは、信じがたかったし驚いた。

「ウォヌさん……。わたしが、彼らの元に行けば平和な日を取り戻せますよね……？」

「そんな事を言うな！」

彼は強い口調でそう言い、わたしを強く抱きしめた。