岩泉一×相合い傘 ページ19
「参ったなぁ」
外は生憎の雨。昨日の天気予報で降水確率40%とか言ってたから、傘は持っていかなくていいか、とか思ってたらこの有り様。
「Aちゃん!!優しい及川さんが傘に入れてあげようか?」
……これは走って帰るしかないか。
「じゃ、また明日ね!!」
「チョット、俺のこと無視!?」
「体冷やして風邪ひいたりしたら大変でしょ?徹はさっさと帰って休みなよ」
「Aちゃんっ……!!」
感動している徹は放っておき、お疲れ様でーすと軽い挨拶をしてアスファルトを蹴った。その時。
「おいA」
……私がどしゃ降りの雨の中、走って帰ることを許さないであろう人物に呼び止められた。
「は、一……」
「お前、この雨の中走って帰る気か」
彼の声は怒りを含んでいる。あまりの迫力に一と目が会わせられない。
「だって傘ないし、この中に私と家の方向が一緒の人、いないし。風邪でもひいたら大変……」
「お前も俺らにとっちゃ大切なマネージャーなんだ、風邪ひかれたら困るんだよ」
まっすぐな瞳でそう言われた。一は頑固だから、絶対に私を送るつもりだろう。逆らっても仕方ない。
「……じゃ、お願い」
「おう」
2人で他愛もない話をしながら雨の道を歩いた。時々肩が触れあうのにドキドキして。
彼の肩は少し濡れていた。私を濡らさないように歩いてくれてるんだな。
そういうところ、本当に……
「A」
真剣な声で名前を呼ばれ、彼の方を向く。彼の手が驚く程優しく私の頬に触れた。
「じっとしてろ」
もしかして、と淡い期待をしながら目を閉じる。数秒後、「いいぞ」という彼の声。
「睫毛ついてたぞ。お前、さっきから目ぇ擦ってるだろ。寝不足か?」
指先についていた睫毛をふっと吹き飛ばした。そうかもね、と曖昧に笑うと体調管理はしっかりしろよ、と真面目な言葉が返ってきた。
「一、私の家ここ。ありがとね」
「おう。じゃ、また明日な」
「は、一!!」
彼はなんだ?と振り返る。喉元まで出かかった言葉、それを無理矢理消して
「……おやすみなさい」
「……おやすみ」
一はふっと笑った。
まだ口に出す勇気はなくて。
遠ざかる"好きな人"の後ろ姿を、幸せな気持ちで見つめていた。
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スズカ(プロフ) - 美月さん» 続編の方にて、リクエストのお話書かせていただきました!ご確認よろしくお願いします! (2019年5月24日 19時) (レス) id: 1a8fb1a009 (このIDを非表示/違反報告)
スズカ(プロフ) - 美月さん» 了解です!!リクエストありがとうございます!!なるべく早く書きますので少々お待ちくださいね!! (2019年5月19日 18時) (レス) id: 1a8fb1a009 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - スズカさん» はい!もちろんです!!楽しみにしています! (2019年5月19日 16時) (レス) id: 001893ea4c (このIDを非表示/違反報告)
スズカ(プロフ) - 美月さん» コメントありがとうございます!!面白いと言っていただき光栄です!!リクエストは続編の方で書かせてもらっていいですか? (2019年5月19日 16時) (レス) id: 1a8fb1a009 (このIDを非表示/違反報告)
美月(プロフ) - はじめまして!凄く面白いです!リクエストで川西太一くんが彼女である夢主にdキスして欲しいです!これからも応援しています! (2019年5月19日 15時) (レス) id: 001893ea4c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スズカ | 作成日時:2019年4月2日 21時