童子切の刀 (ページ34)

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鬼が30匹ページ34

童子切side

夏は夜が美しいと、そう耳にしたのはもうどれほど前のことなのだろうか。

視線を上げ、蛍が飛び交う川辺を眺めて最近やたら記憶の底から顔を出すあの子のことを考える。

今頃、どうしてるんだろう。

もうずいぶん前に離れたきり、噂話にその名を聞くことはあれど、この目で見たことは一度もなかった。

その噂だってあれ以来一度も聞いていない。

＿＿いや、自分から避けていたのだ。

大切な人に与えた傷はたとえそれが意図したものでなくとも、私をも傷つける。

考え事に思ったよりも耽っていたらしい。

「童子切、少しいいか」

「っ、ああ、主さんかー。どうかしたの？」

主さんと源氏兄弟、薬研殿、一期殿が近づいていることに全く気がつかなかった。

普段からは想像し難いそこそこ真面目な表情を浮かべた主さんが告げ、私は思わず瞠目した。

____お前の隠し事について、話がある。