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手を顔の前で振って徒歩で帰ると示すと、笑顔で一蹴された。上機嫌のチャニオッパが部屋から出ていき、残った頼みの綱であるリノさんをチラリと見る。
パチッと大きな瞳とかち合った。見ていたのがバレて罰が悪くなり、他の所へ向けた視線は今度はファン・ヒョンジンと交差した。
「A……さん」
彼のふっくらとした唇が動き出す。
「俺もAさんが居てくれたら嬉しいです。……その、＿＿＿＿＿＿＿」
ヒョンジンは下を向いて口に手を当ててしまい、口元が読めなくなる。
「"すみません、上を向いてもらえますか？"」と打ち込み始めた手を制止したのは、最後に会った時よりもかなりガタイが良くなったチャンビンだった。
「ヒョンジニ、口を隠すな」
「……あ、ごめん」
ハッとしてまた口に手を当てるヒョンジン。これはもう人の習性だから仕方ない。私だってよくする。
「そういえば、Aって手話するの？」
チャンビンの質問に頷く。
「"でも、周りにする人が居ないので大体スマホに文字を打ってます。口の読み取りは分からない時は相手にも文字でお願いします"」
「どっちが会話しやすいの？」
「"手話です"」
元々、作詞の引き出しを増やすために外国語を覚えていたから、手話も同じ様に身につけていった。
「じゃあ、俺覚えるから。教えてよ」
「え、ヒョン！……俺も！俺もいいですか？」
あざとく首を傾げるヒョンジンにOKサインをすると、赤子かと思うくしゃくしゃの笑顔が現れた。Stray Kidsはチャニオッパ寄りの箱推しだけれど、次にヒョンジンを贔屓しているから、間近でギャッブを見て胸が高鳴った。
「チャニヒョン来たみたいだし、車まで行こう」
チャンビンが手を差し出す。彼が優しさの擬人化だというのはコンテンツで知っていたが、ここまでとは。
しかし、スマホで文字を打ったり、手話をしたりする時に必要な手が塞がるのは不便だから、あまり好きでは無い。私は彼の手を押し返した。
チャンビンは特に反応せず歩き始めた。私も他のメンバーに会釈をして、彼の背中を追った。
玄関を開けると再び大きくなった雨粒が地面に叩きつけられていた。すぐ近くに停められていた車のドアをチャンビンが開けてくれて乗り込むと、何故か彼も隣に座った。
「"住所は？"」
暗くなった車内でスマホの画面に照らされたチャンビンは何食わぬ顔で尋ねた。
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作者名：コンビニ | 作成日時：2024年1月25日 5時
