お姉ちゃんのこぼれ話【シリーズ短編】 (ページ9)

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だいぶ前にてつやくんから「この日暇だから遊びに来なよ！」と連絡が来ていた。いつものごとくゆる～い感じで、いつ頃顔を出せばいいかと尋ねれば「まあなんか早めに来て」という返事。

「じゃあまあそうします」と、今日はなるべく早めの新幹線で岡崎まで来てみたが「駅に着きました」という連絡にさっぱり返信がない時から少し嫌な予感はしていた。

とりあえずスタジオへ向かうと、エントランスのインターホンからは女性の声。「もしかして、女連れ込んでる時に来ちゃったのか」と焦ったが、思いのほかすんなりと中に通され、出迎えてくれたのは上品そうな女性で。

てつやくんのお姉さんと聞いたときは普通に驚いた。

(似てねえなぁ。)

この前、東海のサブチャンネルに顔を隠して出ていたのを見たが、やりとりを見るに随分とあけすけな性格っぽくて、もっと“肝っ玉姉ちゃん！”みたいな人を想像していた(まあつまりは正直、こんな美人な人だとは思わなかった)。

俺たちの事情を話せば、綺麗に整った眉が歪み、その後はすぐ謝罪の言葉が続いた。

「すぐ飲み物用意するから、何がいい？」と、本当に東海オンエアのスタジオなのか疑わしいほどきれいに整った空間で、東海オンエアのスタジオとは思えないもてなされ方をされ、なんだか不思議な感覚に陥る。

飲み物の準備をしてもらっている間、千葉も同じようなことを思ったのか「なんか、別のところ来ちゃったみたいだね」と漏らした。

「ってかお姉さん、結構タイプ。」

「お前よくそういうこと今言えるよな。」

「やめとけ。てつやくん相当シスコンらしいぞ。」

「いや別に、ちょっと思ったこと言っただけだって！」

「深い意味はないよ」と慌てる千葉に、こやとにっちはまたツッコミを入れていたが、俺は軽口を叩けなかった。

千葉の言葉に、心の中で同意してしまったもんだから。

(まあほんと、だからどうって事はないけど。)

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