貴女に首ったけ_02 ページ43
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(あれ…)
いつの間にか寝ていたらしい自分に気がつき、ぼやける視界であたりを見回す。
(車…。)
見慣れた愛車、アストンマーティン。
ああそうだ。確か、図らずもお酒を飲んで、酔っ払って。
走行中の揺れが、ゆりかごに乗っているようで心地良い。また目をつぶればすぐにでも眠りにつけそうだなと思う。
(走行中…?)
もちろん俺が運転しているわけではない。
運転席へと目を向ければ、いるはずのない人物の顔が見えて一瞬で目が覚めた。
「Aさん!?」
「……。」
名前を呼ぶとチラリと目線がこちらに走ったが、すぐにまた正面へと戻る。
「え、なんでAさんが?」
「……。」
「っていうかこれ、どこに向かって」
「りょうくん、今、話しかけないで。」
あまり聞かない、Aさんの重々しい声。
酒の失敗には気を付けていたつもりだったが、今日は何か大きな失態を犯したのかもしれない。
結局そのまま無言が続き、気が付けば目的地に着いたようで車が完全に停車した。
「あの、Aさん、すみま「あーー!!緊張したーー!!」
まずはとにかく謝ろうと口を開いたが、Aさんが大きな声を被せた。
「何この、どう考えても高級車!って感じの車!!傷でもつけたらどうしようかと思ってビクビクした!!」
「……。」
「あ、運転中はごめんね?集中してないと怖かったからさぁ。りょうくん、寝てて知らないと思うけど、てつやが私に電話してきてね。迎えに行ったら虫くんに「車ごと中の荷物をお願いします」って頼まれちゃって。」
「荷物って…」
「君のような大きな荷物、私一人で運べる自信なかったから起きてくれて助かったよ。」
知らないうちに荷物扱いされていたことも問題だけど、そんなことよりもっと大きな問題がある。
「ここ、スタジオだけど。」
「悪いけど今日はここ泊まって。りょうくんの家、私知らないし。あと正直、もうこの車運転したくない。」
「心臓に悪すぎ」と笑いながら車から降りるAさんを追いかけるように俺も慌てて車から降りた。
「Aさんは、どうすんの。」
「どうするって…私は今ここに住んでるから。」
また足を進めようとするAさんとは反対に、俺は足を止める。
「俺、車で寝るよ。」
「え、なんで?ベッドは余分にあるし、どうせ明日スタジオでしょ?」
「酒が入った男と二人きりで一夜を過ごすことに抵抗がないなら、それは改めたほうがいいと思うけど。」
「“酒が入った男”と過ごすのは抵抗あるけど、“酒が入ったりょうくん”なら大丈夫だと思うけど。」
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STO(プロフ) - ひなたさん» コメント、ありがとうございます。とっても励みになります^^ 続編についてですが、現在編集中の為パスワードを設定しております。準備ができ次第公開しますので、すみませんがもう少々お待ちください…!!他作品まで覗いてくださって、本当にありがとうございます! (2020年5月3日 22時) (レス) id: d38e93f1d3 (このIDを非表示/違反報告)
ひなた(プロフ) - 次作のパスワードはどこかに公開されているのでしょうか?? (2020年5月3日 22時) (レス) id: 08bb1ee4ce (このIDを非表示/違反報告)
ひなた(プロフ) - 素敵な作品が読めて最高に幸せでございまさす。これからも応援してます!作品楽しみにしてますね(^^) (2020年5月3日 22時) (レス) id: 08bb1ee4ce (このIDを非表示/違反報告)
STO(プロフ) - ちゃんこさん» 乏しい語彙力を振り絞って書いているので恐縮です…!応援ありがとうございます^^ (2020年4月28日 7時) (レス) id: d38e93f1d3 (このIDを非表示/違反報告)
ちゃんこ - 言葉選びやも展開もとっても好きです…陰ながらですが応援しております、!!!! (2020年4月27日 20時) (レス) id: d3a7475a7c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:STO | 作成日時:2020年4月21日 15時