望の部屋(宝物庫)

27.同窓会(後悔の山) ページ27

〆．



「のんちゃんじゃなくてもいいじゃない、きっと他にも男いるって！」



「それでいつか、男にも友だちにも、親にも見放されるパターンね」



私のことだってすぐにわかった。



望が腕を振り上げたから。



「……みなさん、はじめまして。望の恋人の重岡Aと申します。



残念ながら、みなさんの言う通りに私は性格も良くないし、望の前だとぶりっ子になるし、親に見放されました」



「A……」



「望に釣り合わないことなんて、私が一番よくわかってるんです」



「A！！」



望が慌てて止めようとするけれど、違うの。



望に、聞いててほしい。



「いろんなことがありました。別れたこともありました。だけど………もう私、望のこと手放せないんです。



みなさんが望のことを好きだというのはよくわかりました。だけど、譲れません」



「………………………」



望が焦っている理由の一つに、



今日は録音機器を持っていないことが挙げられる。



泣きそうだもんね。



話に集中してほしいんだけどな。



「そっ………そんなの、あなたのわがままじゃない！のんちゃんの幸せ考えたら………！」



「呼ばないで」



「はあ……？」



「私、器が小さくて嫉妬深いの。望のこと、のんちゃんなんて馴れ馴れしく呼ばないで」



望が倒れた。流星がため息をつく。



「んまぁ、そういうことやな。望とAは引き裂かれへんくらい深い愛で結ばれてもうてるから、今更きしょい猫なで声出しても無駄ってこと。



空気悪うしてごめんなー！俺ら帰るから！」



「流星……」



「今日のAは、ちょっと望には刺激が強いみたいやな」



「思ってること言ってるだけだし」



「それや」



流星が望を背負う。



タクシーの中に乗り込めば望はにやけながら私の膝に頭を置いて、



「ちょっと感触を……いやいや、寝転んどきたいから…」



通常運転な台詞を吐いて目を瞑った。



いや、起きてたんかい。



「流星……同窓会なのに、ごめんね」



「謝らんでええやろ、仲良かったやつ欠席してて正直おもんなかったし」



「Aとおれる方が幸せや♡」



「これ寝言？」



「望の奇行はいつものことやろ」



「私も望と一緒にいれたら幸せだよ」



望の意識が完全に飛ぶ。



タクシーが揺れた拍子に、



カメラを起動しっぱなしのケータイが望のポケットからはみ出しているのを見つけてしまった。



ケータイって便利だね。



〆．

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