望くんと彼女。

23-1.記念日と珍事【リク】 ページ36

〆．



珍しい。



「A、おはよ！」



あの望が。



「おはよ、望」



靴箱にいる。



「今日の手紙はちょっと長めやねんっ」



「あ、ほんとだ。いつもありがと」



手渡しなんて初めて。



「あ……頭、撫でて？」



「うん、よしよし」



顔がふにゃふにゃだ。



「それと、あの」



「ん？おはようのキスかな？」



「っ！！そう、それ！ほしい！」



当たってたか。



「ちゅー」



わざとらしく唇を突き出してみれば、カシャッといういつもの音が聞こえてから、ようやくぷにゅっと。



「教室行こや」



「うん」



手を繋いで、指が絡まって、これってまた望が手を洗わなくなるパターンだなって。



「今日のヘアセット、いつもと違うんだね」



「わかる！？今日は『Aが初めて俺にノートを見してくれた記念日』やから、つい気持ちがたかぶって！」



「ああ………望がわざわざ手袋をして丁寧にノートをめくって、写真を30枚くらい撮ってたあれね？あれから一年なんだ？」



「ちなみに赤ボールペンのインクをちょっとだけ採取したから、その記念日でもある！」



「とんでもないことをしてるし、なんの記念なのか全くわからないけどね？」



「あの、とにかく今日は記念日やから特別なことしたくて」



「うん、何かな」



特別、か。毎日記念日って言ってた人が記念日に特別なことしたら、それってもはや特別じゃなくな………



いや、なんでもない。



「ツーショット撮りたいです！」



「一周年記念日だもんね」



「はい、チーズっ」



画像加工一切無しのカメラアプリで撮るのは、ありのままの私を愛でてくれてるって解釈でいいのかな？



「あの！ぎゅーもしたいです！」



「やった、私もしたいなって思ってたの」



「はうう、」



「おいでっ」



この前の雷の時、できなかったからね。



「んああ、Aのこの柔らかさ、フィット感、最高のボディライン……」



「朝から変なこと考えてる」



「年中無休やもん……」



「そっか」



すごく腑に落ちる。



〆．

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