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〆．
美容院「WESTERN RAINBOW」に通うようになったのは、数ヶ月前からだった。
しがないOLをやっている私が、同僚に職場近くの美容院でここがオススメ！と言われて来たのが始まり。
その時から担当のスタイリストさんが重岡くん。
どうやら同い年みたいで、すぐに意気投合した。
そしてそんな彼に徐々に惹かれて、
今では彼目当てに美容院に行っているも同然だった。
ただし、ちょっと特殊な通い方で。
「こんにちはー…」
「お、いらっしゃいませ」
笑顔で迎え入れてくれたのは神山くん。
あと二人の美容師さんは接客中と休憩中みたい。
「よっ、A〜」
「こら、しげ。お客さんに呼び捨ては馴れ馴れし過ぎ」
「ええやん、な？A」
「うん」
「よし、ほんなら早速いつものアレ、しよか！」
荷物は神山くんがサラッと受け取りロッカーへ。
重岡くんは私を手招きし、シャンプー台まで導いた。
そう。
私は、
重岡くんにシャンプーをしてもらう為だけにここに通っている。
たまに髪をすいてもらうけど、基本的に短くとかアレンジとかカラーとか……そういうのは一切頼まない。
重岡くんのシャンプーはとても気持ちいいから、それだけを頼むんだ。
ネットで、そういう注文もできるって知って。
一週間に一度来てるし。
疲れた金曜日の癒し、ってとこかな。
残業がある日は翌日の土曜日に来る。
シャンプー＋ブロウ。それが私の定番のオーダー。
「今週もお疲れさん」
「重岡くんもね」
シャンプー中と、ドライヤー中。
私たちのお喋りの時間はそれだけで、
なのに心が満たされる。
些細なことも大きな幸せに感じられるのなら、
深刻な家庭の事情に感謝すべきだろうか。
「お会計が1260円ですぅー」
「ふふ、はい。また来週来るね、癒されに」
「ひひ、どーも！ほんならまたなぁ」
ぶんぶんと手を振って壁にぶつけてる。
ああ、本当に癒された。
あの地獄に帰らないといけないのが憂鬱だけど、また一週間頑張れそう。
〆．
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作者名：はゆな
| 作成日時：2020年4月8日 21時
