扉の向こう側［n/p/r］ (ページ2)

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炎ページ2

なぁなぁそっちで火事があったらしいぞ、

スーパーから出るとそんな声が聞こえた。

確かにサイレンの音が聞こえる。

ただ、私はこの世界の住人じゃない。

私にとって、世界は他人のようなものだ。
私が住んでいる場所は人ひとりもいない、
他人に影響されないし、影響させない。

そんなひとりぼっちの世界。

だからどうだっていいのだ。
世界なんて。

ドアを抜ければ、出れてしまう世界に
災害なんて一炊の夢のようなものだ。

野次馬が次々走っていく中で、私も同じ方向に歩きだす。

火事の現場が見たい訳ではなく、彼に挨拶をもう一度しに行くのだ。

そう考えて歩いていると彼と目が合った。

ああ、不幸中の幸いか、

火事の現場は彼の家の隣だった。
真っ赤な炎に照らされたその横顔は、
さっき水をあげたばかりの花を見つめていた。

真っ黒になって元の色が分からないくらいに燃やされる。

それは簡単に灰になる。

世界がどうだっていい？
そんなこと思った罰なのか。

私の事じゃあないのに
彼の横顔を見るのは辛かった。

明るいオレンジ色がうるさいくらいに明るいので私はそこから逃げ出すように走り出した。

そこら辺の扉を適当に開ける。

すると、途端に草原に戻る。

はぁはぁと荒い息を落ち着かせる。
見たくないものを見てしまった。
後悔が頭の中をめちゃくちゃに掻き回すので、
1度家に戻り手に持っていた買い物袋から食材を取り出した。

真っ赤なりんごがあの炎のように見えた。