三井×鈍感 ページ5
練習が終わり、体育館横の水道で水を浴びるように飲む。
脳裏にはAの泣いている姿が焼き付いて離れない。なぜ泣いていたのか、俺が何かしたのか。
「わっからねぇ…」
「ぜってーミッチーがなんか言ったんだ」
「三井サン女心ってもんを知らねぇからなぁ」
まだ三井が「Aが泣いてた」しか言ってないのにも関わらず、桜木と宮城は口々に好き放題言う。
「俺はなんも言ってねぇ!気付いたら泣いてたんだよ」
「てかそれ泣いてた、じゃなくて泣かせたんスよね?」
「グレてたからなぁ」
「おいそれ関係あンのか?」
この二人に相談したことが間違いだった。いやそもそもこの二人には相談する予定ではなかったのだ。
部活練習中、ついボーッと考え事をしていたら(まあそれが今話題に上がっている泣かせた事件なのだが)そんな三井の様子に気付いた桜木に「どうしたミッチー!」と聞かれ、思わず口を滑らした、というのが経緯なのだが…
「なんでテメーまでいる、宮城」
「まあまあ、恋仲間じゃねぇスか」
「ンだよそれ…」
「そんでミッチー、まだ泣かせた理由を聞いてないんだが…」
「だから泣かせてねぇよ!」
何回も同じツッコミを入れることにうんざりして、とっとと自分が泣かせてないことを証明しなくては、という心持ちで昨日のことを話始めた。
「昨日の帰り、公園寄って普通に話してたんだ、Aとよ。して、向こうがいきなり何も言わなくなったから、顔見たら目ぇ瞑ってたんだよ。だから、そんなに眠いならもう帰るか?って聞いたら急に泣き出したんだよ…本当わからねぇ」
なんでこんなやつらに…と不満に思いつつも、誰かに相談できたことに少し心が軽くなる自分もいた。
32人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:銀色の侍 | 作成日時:2023年1月18日 3時