消えて無くなる前に手を伸ばした。 (ページ1)

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第1章　笑顔と苦痛は紙一重ページ1

__君の目を見て笑えたら、少しだけ結果は違っただろうか

狭い病室の

中央に

僕の好きな人が寝ている。

「生きているのは辛い？」

あの日あった事故から1年、彼女は目を覚さない

原因は脳…だとか、生きてるのは確かだけど

僕はこんな状態が1番辛いと、思ってしまう日がたまに来る。

「ねぇ、奈々」

毎日のようにお見舞いに来ては

少しだけ話して帰る。

「来週の土曜日に花火大会があるよ、奈々昔から花火好きだよね」

彼女の閉じた目を見ながら、ゆっくりと言葉を放つ。

ベッドに置いた手が震えた

同時に涙が溢れて、不甲斐ない自分が悔しくて

「ねぇ、奈々…僕は君を幸せにできるのかなぁ」

彼女には聞こえてないのに、拒まれた気がした。

「え……………？」

小さな吐息が、少しずつ揃う。

僕1人だけじゃなくて、段々と優しく揃う。

「な…奈々っ…！？嘘だろ、奈々！！！」

「あの…どな…た……で…す……か？」

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

目の前が真っ暗になった。

今までの日々を黒で塗りたくられた

僕の努力が踏み躙られた

だめだ。素直に喜べ、じゃあないと僕が報われないだろうが

＿＿＿＿＿＿＿＿

「急にごめんね、君は…僕と付き合っていた女の子なんだ」

「ぇ………し…ら……な……い…で…す」

「怖がらせるつもりは無いよ、ただ…」

喉が痛い、視界がぼやける

彼女の目を見ると、心の底から怖がっていて

まるで、不審者を見るような表情だ。

「記憶が、ないんだね」

＿＿＿＿＿＿＿＿

彼女の花のような笑顔をたまらなく愛している

繊細な表情や姿は誰よりも好きだった

彼女の隣にいれる事が夢かと思うように幸せだった

なのに、全て無かった事だもんな

「奈々、僕のことは忘れてくれ、適当なタイミングで死ぬよ」

彼女が全てだったんだよ

「だ…め」

わずかな力で、シャツを掴まれた
彼女のなりの必死な抵抗だ。

どうして？知らない男に話しかけられて

不安だろ、怖いだろ

「どうしたの…？僕のことは放っておいてくれて結構だよ」

「い…や………あな…た…のこ…と…」

「もっと知りたいの！！！」

力強く放たれた声がもう一度僕を動かした。