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iw「家帰んねぇの？」
阿部から余計なことをするなという視線は食らってる気がするけれど、マジでふっかの言うとおりの行動をするのは気が引けた。
kj「まぁ…、はい。カメラのお仕事も多分もう戻られへんから、警察の方から説明してもろうてええですか？」
iw「そんなん自分でやればいいじゃん」
kj「携帯使えないし、ここからも出れへんから」
iw「なんで？」
キンキンと鉄で作られた階段を上る足音が聞こえると、向井の一度開きかけた口が閉じて彼の笑顔が力ないものに変わる。
kj「残念やったな、タイムオーバーや。」
「どちら様です？ここ完全予約制なので、予約の無い人のご来訪は遠慮してもらってます。帰ってもろうてええですか？」
足音が消え、声のした方を向けば中年男性。
俺らの存在に少し驚いていたようだが、すぐに顔色声色共に厳しく声をかけてきた。
ab「照、今日はもう帰ろう」
iw「でも、」
ab「不躾なこと失礼いたしました。またの機会にお願いします。」
阿部がそう言い切ると俺に行くよと声を掛け男性の立つ階段の方へ向かうから、後ろ髪を引かれる思いのままその後に続いた。
＊
iw「ねぇ、阿部ってば！」
1人スタスタと歩いてしまう阿部に声を掛けつつ、後ろから肩を掴んで振り向かせる。
iw「なんでそのまま帰ろうなんて言ったの。
絶対やばいやつだったじゃん、携帯使えない、ここから出れないって。」
ab「ふっかの話聞いてた？」
iw「だとしても捜索届出てるんだったらそれを理由に連れ出せたんじゃ」
ab「一般捜索人に対して警察は捜索届が出てることしか言えないの。
だから本当はさっきの照の引き留めはやってほしくなかったけど、ただの一般捜索人にしてはいけないって分かったから今回は助かったよ。」
iw「いっぱんそうさくにん…？」
聞きなじみのない単語に首を傾げると、阿部はえっとね、と顎に手を当てた。
ab「失踪って言ったって自分の意志で全てを放り投げた場合と事件性のある場合があるのは何となく分かる？
前者の場合は無理に帰れって言えないから、事件性のないときは一般捜索人。
でも逆に事件性のある失踪の場合は特別捜索人ってなって警察も動く。」
iw「じゃあ、さっきので向井康二が特別捜索人扱いになったってこと？」
ab「そういうこと。ただ今後は慎重にやってね。」
膨れ面のまま行われる注意にしっかり謝れば、分かればよしと微笑まれた。
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作者名：紗絢
| 作成日時：2020年11月2日 17時
