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ab「だとしても、元は康二の叔父さんが強制的にやらせてたことだよね？」
加害者の供述から分かっているのは、康二は悪くないということだ。
康二の能力を知った叔父が利益欲しさに家族と引き離して始めさせたと聞いている。
kj「最初はホンマに嫌やったよ。
せっかく頑張って入学決めた短大に行くことも出来んくて、逃げ出そうとすればすぐに連れ戻される。
言うこと聞かなければ殴られるし、こんな能力なんて無くなればええと思っとった。
そしたら、みんなみたいに普通に大学にも行けて、就職も出来るやんかって。
普通やないせいで、こんな苦しまなあかんのやって・・・！」
頭を抱える仕草で重力に負けたセーターの裾がダラリと垂れる。
そこから覗いた火傷の痕と左手首に残る白い傷跡は過去に何があったのかを赤裸々に伝えてくる。
kj「でもな、叔父さんに言われた。『お前は能力あってこそなんや』って。
『治癒能力が無ければ、そこらへん歩いてるおっちゃんとなんら変わりない。それどころか元々能力者なんやからむしろ出来損ないのおっちゃん以下』って。」
ab「そんな訳ない！
能力者だって…普通じゃなくたって、ちゃんと存在している意味だってある…」
kj「ごめんな、きっと叔父さんも能力者全員のこと言うてるわけやないねん。
俺やから叔父さんも言った言葉なんよ」
申し訳なさそうに謝ってきて、フォローの仕方を間違えたのだと気づいた。
さっきのぎこちない笑顔じゃないけれど、見ているこっちが苦しくなるような笑顔。
違うよ、康二だって出来損ないなんかじゃない。
iw「だとしても1回はノードクターの仕事を辞めてるわけだろ。
カメラマンとしての生き方を見つけてるのになんでまた…」
kj「辞めたってか気づいたら辞めてたって感じやね。
関西におった頃、患者として来とった人のカメラで遊ばせてもらったことがあって。確か窓の外から景色撮ったと思うんやけど。
そしたらるたくんがすっごい褒めてくれて『こんなとこおったら康二の才能が勿体ない』って言ってくれたんよ。
『生活費とかは全部俺が持つ。近々東京に異動なるから一緒に行かへんか。カメラの道極めてみんか』って猛アプローチまで頂いてしもうてな。
俺も俺で高校時代に抱いてた東京への憧れとほんの僅かな興味をくすぶらせてしもうて、衝動的に身一つでついていって今に至る」
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作者名：紗絢
| 作成日時：2020年11月2日 17時
