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(※喫煙描写あり)
-side Iwamoto-
あれ、と思ったのは案件もなく皆がだらりと過ごしていた昼下がりだった。
シガレットケースと共に屋上に上がれば、見慣れぬ先客。
iw「康二？」
ベンチに腰かけている影に声を掛ければ、大袈裟なほどに驚いた後、なんや照くんかと笑いかけて来たけど、その笑顔がどこかぎこちない。
せわしくガサガサと動く手を覗き込めば、銘柄は違えど俺の手に握られているものと同じものがあった。
iw「吸ってんだ、煙草」
ベンチの向かいにある転落防止柵に凭れかかって一本咥えれば、同志だと分かったようで隠すのを諦めたらしい。
貸そか、
オイルが無くなっていたのか何度押しても着火しなかったのを見て、その場から俺に向けて自身のライターを投げてくれた。
ありがたく借りるけれど、どうも康二と煙草はイメージが違いすぎる。
kj「似合わへんやろ。それは自分でも分かっとるんやけどな」
サンダルで踏みつぶされた吸い殻はたったの一本。
長さ的にも火をつけてすぐに消してしまったのだろう。
何を話すでもなく、ただ康二を眺めながら吸っていれば、右へ左へと不安げに視線が揺れたのちにキュッと口角が上がる。
kj「もー、照くんも黙っとらんでなんか話てぇや」
1人語りは寂しいて、と箱の蓋を開けて一本取り出す。
その手つきが覚束なさげに見えたのは、微かに震えている気がしたからだ。
iw「・・・やめとけ」
思ったより低く出た声に、康二の動きがピタリと止まり、その後ゆっくりと開きかけの蓋を閉じた。
iw「なんで無理して吸おうとすんだよ。誰に強要されるもんじゃないんだし」
kj「＿＿＿依存、してしもうたんよ」
吸いなれてないのに？灰を落としながら聞いてみれば、せやなと返される。
kj「煙草吸うと不安が紛れるって聞いたから、吸えるようになりたくて」
そんな訳ない、俺も喫煙者であるにも関わらず訂正したい気にもなったがグッと堪える。
俯いてしまった康二の雰囲気が、自分の叔父が逮捕されたあの時と似ていた。
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作者名：紗絢
| 作成日時：2020年11月2日 17時
