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-side Watanabe-
なんだこれ、って言うしかない状況に俺は溜息をつく。
リビングで会議するからと追い出され自室のベッドに腰かけているのだが、ひざの上には向井康二の頭。
小さくなって寝息を立てている。
一方的に懐かれるまではだいぶ人見知りを発揮させてたし、警戒心も強いように見えた。
けれども俺の瞳に興味を持ったこいつは、気づけば「翔太くん翔太くん」とくっついてくるのだから本来は人懐っこい性格なんだろう。
セーターの裾から見える腕に残る赤黒い痣が痛々しい。
kj「…め、なさ…ッ、いかないで…っ」
スマホを適当にいじっていたら、唸り声の後に聞こえた息苦しそうに吐かれる言葉。
ぎゅ、と俺のズボンを握る力はさっきよりも強く、一緒に捕まれている太ももも少し痛い。
nb「・・・・」
俺に甘えてくる奴なんか居なかったからどう対応するのがいいか分からないけど、空いていた手でぎこちなく丸い頭を撫でてやる。
そうすれば少し安心したような顔でまた寝始めた。
可愛いな、
不覚にもそう思ってしまった自分にハッとするけれど、同時にふっか達から俺に康二を託された理由が分かった気がした。
＊
kj「ぇ、ええんですか…！？」
fk「康二が嫌じゃなかったらね。男ばっかでむさくるしいかもしんないけど、なんかあった時に頼れる人は多い方がいいでしょ」
晩御飯と呼び戻されてダイニングテーブルを囲んでいると、ふっかから康二にしばらくここに住まないかと提案されていた。
心底嬉しそうなその顔からしてその提案には乗るつもりなんだろう。
sk「仕事場って言ったって案件こなす以外はただのシェアハウスだし、康二も過ごしやすいと思う！
舘様のご飯も美味しいし居心地いいし！」
kj「じゃあもうお世話になるしかないやないですか！これからよろしくお願いします！」
半分勢い任せで康二も住み始めたけれど、打ち解けるのに時間は必要なかった。
2週間もすれば佐久間と一緒にふざけてみたり、涼太の料理を手伝ったりする様子を見かけることが増える。
俺の予想通り人懐っこいやつだけど、この中で一番年下ということもあって他の奴らも康二を実の弟のように接している節がある。
今までの家の空気感が、少しずつ変わり始めていた。
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作者名：紗絢
| 作成日時：2020年11月2日 17時
