少女に記憶 (ページ9)

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第98話ページ9

幻は霧が晴れるように消え去った

そして現実があらわになったの瞬間、これが現実が疑ってしまった
なぜなら、私は壁にくっつき、床から浮いていたのだから

「…あ、そっか」
しばらくして、その認識が間違いである事に気付いた

壁と思っていたのは床で、床と思っていたのは壁だ
つまり、私は倒れているのだ

さっきの幻で私は立っていたから、
そのままの感覚でいて、床と壁を逆に認識してしまっていたのだ
それに部屋が全て同じ白だったため、床と壁の違いがないのも原因の1つだ

「よっと」

体を起こし、周囲を見渡す
ここにはカインはおろか、他の科学者すらいない
敵である私をここに放置していたわけ？

呆れて首を振ると、ぽたぽたと白い床に赤い滴が落ちた
自分の血だ

「…」

それを見て、連鎖的に先程の事も思い出した

まだ傷による痛みや幻影魔法によるぼやーっとした倦怠(けんたい)感は抜け切れていない

若干ふらふらとした足取りでこの部屋のドアへ向かう
ドアノブを掴み、捻るが鍵のかかった音がし、ドアが開く事は無い

「…ぶち破るか…」

短絡的思考でそんな解決方法に至った
魔法発動しようとして、その思考に違和感を抱く

頭が上手く働いていない、ような…？

「…もしかしてまだカインの魔法の影響が抜けきって無い？」

そうなら、仲間に合流するよりも先にカインを探す方がいいだろう…

私は気づけなかった

ドアを壊すのは敵が集まって面倒な事になるかもしれない
カインに会ったら、幻影魔法を再びかけられるかもしれない
…そもそも、まだ幻影魔法の術中かもしれない

そんな普段なら思いつく様々な可能性を考えられなかった事に

私は、魔法を発動した

――――ッ

衝撃波が飛ぶ

ドアは簡単に吹き飛んだ

「…カインは、どこ…」

そう呟き、外に出ると…

「あら、久しぶりね
　このまま現れなかったら、死亡確定と判断するところだったわ、ユイカ」

悪戯っ子のような笑みを浮かべる"あの人"と

「…」

感情が揺らぎもしない無表情の幼き少女がいた