少女に記憶 (ページ27)

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第116話ページ27

「あ゛ぁぁぁぁぁぁぁああ！！！！」

突然、後ろから絶叫がした

皆がその凄まじい苦悶の声に振り返ると、
頭を押さえて蹲(うずくま)る黄緑の異色を持つ人が

腹部の服が破れており、そこから"人喰い"に喰われ、それを治療した跡が見えた

血走った眼で皆を見返し、口元からは涎(よだれ)が垂れている

明らかな異様さに皆絶句していた

ぶちっ、
嫌な音がその男からした

見ると口の端が若干裂けていた
そして、

ぶちぶちぶちぶちぶちぶちっ

耳の近くまで皮膚が破けた
血が涎のように糸を引いている

そう、それはまるで

「人くいさんみたーい！」
「「！！」」

"私"の無邪気な声が沈黙を破った

「ねーねー、これって『かんせん』じゃないのー？」

"私"のこの言葉にミオラさんが驚きに目を見開く

「感染…！
　まさか、奴らは自らの性質を感染させる力を持ってるのか！？」

ミオラの言葉に男の傍にいた人達が一斉に一歩離れる

その時、

「ぐォるがァァアあああッッ！！」

獣の唸(うな)り声を上げると男が近くの仲間に飛びかかった

「！！」

とっさにその仲間が出した防御魔法と
飛びかかった男の後ろにいた人が放った捕縛魔法で、
彼が人を喰う事はなかった

だがこれで、"私"とミオラさんの予想が当たってしまった事になる

「他に喰われた奴を捕縛魔法で動けないようにして下さい！」

ミエラさんが焦った様子で命令を出す

しかし、すでに遅かった

…ぶちぶちぶちぶちっ

「がァァァっ！！」
「ヴォォォアアッ！！」

血走った眼と裂けた口を持った姿の人達が増殖していた

"人喰いもどき"とでも言うべき彼らは
正気を無くした眼で、自らの『獲物』に狙いを付ける
そして、襲いかかった

慌てて捕縛魔法やその魔法を内蔵した魔法具を展開させる人達

ほとんどが拘束される中、
"人喰い"に噛まれた程度の軽傷を負った人達が
次は自分がこうなるのでは、と怯えの表情を見せ始めた

それもそうだろう

捕まった"人喰いもどき"らはそれでも魔法を喰い破ろうとする
裂けた口の治療や感染の対処のため気絶させようとしても、
すぐに意識を取り戻してできない
さらには、同じ捕縛魔法に捕まった仲間の腕の骨を喰いちぎる

普通ならこうなりたい、などと思わないだろう

幸いなのは負傷した者が結界維持をする者の中にいなかった事だ
いれば、結界が崩れていた

安全圏だった結界内は、今や未知のモノに侵食される恐怖に包まれていた