【d!】居眠りに恋する

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「…あ、Aさん」

ボソッと口に出す。
今帰りなんや…
あ、隣の人は友達やろか。俺だけやないんや。隣。

…何考えてんやろ。

勝手に思い込んで、勝手に舞い上がって、そんなの。

「〜〜〜でね！その時にね！」

友達と思わしき人が話している。
テンションが上がって行っているのか、段々声が大きくなっていっている。

「鬱くんほんっとイケメンな行動したの！」

「うんうん。前置きが長い」

「私を歩道側に寄せてくれたの！ほんっと、思わずキュンってしちゃった！」

「あんたはいつもぞっこんでしょ」

「んふふ、そう見えるぅ？」

「鬱…さん？だっけ」

「うん！」

やけにニコニコしながら話すんやなぁ。
…あ、今の大先生の彼女か。くそ、バレたんあいつのせいか…

「色々変な噂とか聞くから、辛くなったら愚痴ってね。幸せでいてね」

「うん！いやあ、いい友達をもったなぁ！」

「良い彼氏ももったでしょ」

「えっへへへ」

「声、抑えよっか」

「ごめんなさ〜い」

聞き上手やなあ。俺、Aさんとそんな話した事あらへん…
ええなあ。…何考えてん俺。

…今、話しかけたら。一緒に帰れるやろうか。
ノート一冊の関係から、せめて、友達に。

…ああこんなウジウジ考えてたってしょうがないわ！丁度話終わったみたいやし、よし！気合い入れろ！ゾム！

「…あ、Aさん！か、帰り？」

「あ、ゾムくん。うん、帰りだよ。ゾムくんも？」

「…あ、えっへへ、鬱くんから連絡来た！校門で待っとけって！ふふ。じゃあね〜！」

そう言うや否や、機嫌を良くしたのかスキップをしながら校門へ向かっていた。

「おん。…な、あ、良かったら、一緒に帰らん？」

「方向違ったりしない？」

「えっと、Aさんの家って…」

「ああ、あっちだよ」

そう言って、Aさんは俺の家とは違う道を指差した。
どうやら、家は近い訳では無いらしい。
でも、でも…！
折角勇気出したんや。ここで諦めてたまるか！

「…あ、俺と一緒やわ」

「え、そうだったんだ！じゃあ一緒に帰ろうか」

少しずつオレンジに染まる夕暮れの時間帯。
俺の、ほんのちょっぴり熱い頬も、きっとAさんには分からない。
それが嬉しい様な、悲しい様な。
複雑で、甘酸っぱくて、嬉しくて、でもやっぱり複雑で。

本当に。
掻き回されて、その笑顔に絆された俺に逃げ道は無い。

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ラッキーカラー

あずきいろ

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