SMの初恋 III

初恋の煩悩 3 ページ41

YOU side



もう何年もこの仕事をしてるんだから

イケメンを至近距離で見つめるとか
少し触れ合う程度だったら

さすがに慣れたもんだ



実際、スキンシップの激しいメンバーも多いし

天然人たらしみたいな
キュン♡とさせる言動が日常の子もいるから



多少の免疫はついてるはず



それでも
恋愛経験が少ないせいなのか…



気を張って過ごさなきゃ
いちいちときめいてしまう




ポーカーフェイスを崩さずに対応するのって

…実は結構大変なんだよ







わたしだって、普通の女の子だ


"女の子"って表現に怯んでしまうぐらい
歳は重ねてきたけど…


女の子はいつまでも女の子だ！





毎年嫌でも歳はとっていくし
恋愛願望や結婚願望がゼロだと言えば嘘になる


毎日イケメン達と仕事してたって
家に帰ればひとりだし


寂しくないわけない


素敵な人に甘い言葉を囁かれれば
嬉しくて舞い上がるし、気持ちも揺らぐ




それがお世辞や冗談だとしても…だ。




でも、この仕事をしてる以上
事務所の所属タレントとの恋愛は厳禁だ！！




別に、会社から禁じられてるわけじゃない



むしろ、会社としては
写真や動画を撮られた際にも言い訳できるとか
タレントの管理がしやすいとか

そういう大人の事情もあって
あえて推奨する人もいるぐらいだ




でも、わたしは
彼らをそんな目で見てはいけないと思ってる




わたしの仕事はマネージャー業だけじゃない



企画や広報、手広く担当してるから

それは彼らを客観的に見ることが大切で…



常に彼らの味方でいたいとは思ってるけど
彼らに寄り添うだけじゃダメ




時にはファンの目線であったり
スポンサーの目線で見ることも必要なの




そして、まだ若かったときに
「男目当てで仕事してる」って噂を立てられた時の
あの苦い思いがトラウマだ


もう十分歳を取ったし
今更そんなこと言う人なんていないんじゃないかって
思い始めていたところだったのに



ヘリンさんの一件があって…振り出しに戻った



やっぱり、スタッフとしては
変に誤解されるのは嫌だ






そのためには
わたし、もっとしっかりしないと…





旅行の日のチャニョルとの時間を思い出せば

脳内にチャニョルとのキスが浮かぶ



それを、頭をブンブン振って掻き消す



そんなことを何度も繰り返してた







「A…あんた、何やってんの？」







聞き覚えのある声…



振り返ると、そこにいたのは

わたしの親友
スタイリストのハナだった

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