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舞踏会が始まった。俺はずっと舞踏会のピアニストとして、ピアノをを弾いとった。
もちろん社交ダンス曲も俺が弾いとったし、みんな俺のピアノに合わせて踊ってた。
めめの周りには街中の女性が居って、俺はそれを横目にずっとただ無心にピアノを弾き続けた。
舞踏会が始まって1時間程経ったある時、ほとんどの街の女性が集まっとると思われた中、ドアが急に開いた。
「むっちゃ綺麗.......」
思わずそう声を漏らしてしまうほど、とても綺麗な女性がホールに入ってきた。
女性はみんな王子に夢中になっとるけど、このホールに居る男性はみんな彼女に夢中になっとったとおもう。
彼女は恐る恐るホールの中に足を踏み入れとった。
綺麗に纏めれたアップのヘア。目立つ色を着とる訳でもないがしっかりと上半身は女性らしいラインの分かる下半身は綺麗に広がったドレス。むちゃくちゃ濃い訳でもないのにしっかりと目鼻立ちがしとって、仄かに色の付いたリップ。
全てが吸い込まれてしまうくらい彼女にしか集中ができひんかった。
それに、めめも気付いたみたいやって周りの子を他所目に彼女に近付いていった。
「お嬢様、宜しければ僕と踊りませんか？」
「あっ....宜しいんですか？是非。」
めめに目伏せをされ、俺はピアノをダンスする為の物に弾き直すことになった。
1つ息を吐き誰もが聞き入るようなピアノを自分らしく弾いた、名前も知らん彼女はめめと踊っとってこの会場に居るみんなが2人の踊ってる姿に夢中になっとった。
「王子様羨ましいな？」
「なによあのおんな急に現れたと思ったら....」
そんな言葉が俺の耳にも入ってきた。やけど誰が見てもあの二人はお似合いやなって。
ピアノを弾き終え、2人が微笑み合いめめがエスコートをして別の場所に移動して話し始めた。会場に響き渡ったのは2人のダンスを見ていたお客様方の拍手の音。そんな事あるん？ってくらい大きな拍手やった。
「どん底まで落ちてまいそう。」
めめも彼女に惹かれとる。
それが分かると俺の恋心は経った数分で打ち消された。俺が好きになってはいけへん、そういうことだ。
俺はあくまでも彼に仕える平民やから。
めめと名も知らん彼女が笑いながら話しとるのを横目に見ることしかできひんかった。
だって彼女にとって、俺は舞踏会のBGMに過ぎひんから。
ずっと瞼の裏に焼き付いて離れへん彼女の笑顔が俺の気持ちを締め付けていくんや。
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作者名：はる | 作成日時：2020年6月21日 22時
