Cinderella (ページ14)

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あの日、俺がもしピアノを弾かんかったらAさんに会うこともなくて、こんな辛い思いもせんかったかもしれんけど、Aと出会えてほんまに良かった。

「綺麗っすね、Aさん。」

「ほんとですか？これ全部あの舞踏会の時にやってくれた人にやって貰ったんです。」

彼女はそう言った。やってくれた人は余程Aさんの良さを知ってんねやろなって俺もふと思ったけどやっぱりAさんはとても綺麗で俺なんかじゃあかんかったなって、そう思うしか無かった。

「A、そろそろ。」

1人の男性がやってきた、その人も随分と綺麗な顔立ちをしていてAさんは翔太さん分かったといって俺の前から姿を消した。

「お前、偉いな。」

Aさんが出ていったあと目の前にいる綺麗な男の人にそう言われた。翔太さんと言われていたし翔太という名前なんやなと思って彼を見た。

「急に如何なさいました？」

俺は外行きのちゃんとした言葉遣いで彼にそう言った。そうすると翔太さんはふとまたいいのに気張らなくてと、そう口にした。

「なんで、分かったんすか…」

俺は隠してた気持ちが全て溢れるかのように泣いてしまった。ただ初めましての男の人の前で恥ずかしげも無く泣いてしまった。

「しょうがねえよ、Aは王子と結ばれる。ただそう言う運命で、俺らはそれを手伝ってる。だけどそれを手伝えただけでも十分なんじゃねえの？」

それだけ言って彼は部屋を出ていこうとした。しかし部屋を出るドアではなく1度俺の方に来て俺の肩をポンッと叩いて"ピアノ頑張れよ"とそれだけ言った。

「あ、ありがとうございます。ホンマに、俺Aさんの綺麗な姿に似合うようなピアノ弾きます」

「やっぱり君がAの言ってたピアニストさんか、この前舞踏会の帰りにもさっき俺がメイクしてあげてる時もピアニストの人が～って話してたから。」

「俺の話を…ですか？」

「Aからしたら君もこの物語の人間なんだよ、エキストラではなくて。まあ、きっと主役にはなれねえ脇役だけどね。」

彼のその一言で救われた。彼はじゃね、といって扉を出て言ったがエキストラでしかないと思ってた俺がほんまは物語に必要な脇役でただAさんの記憶に残っとってこの物語には大事な存在やったこと、ホンマに嬉しかった。

「今日はAさんが幸せになる日やから、頑張らな。」

俺はそう声に出し俺も扉を開けた。

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