雪は舞って闇に咲く参 (ページ6)

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時は子の刻。見張りの者達以外に目を覚ましている者はいない、生き物さえ眠っているようなそんな夜中。

美雪は徐ろに布団から起き上がるとスっと窓の障子を開けた。空にはぽっかりと満月が浮かんでいた。

障子を開けた先の迫り出した部分には先客がいた。

｢…美雪様、不用心に開けるなんて危ないですよ｣

美｢辰哉…｣

見張りの当番では無いはずの深澤だった。

深｢っ、、懐かしいですね、今じゃ誰も下の名前で呼んではくれないので。久しぶりに呼ばれましたよ｣

美｢…もう、昔みたいに呼んではくれないんだね｣

深｢美雪様は…美雪様ですから。俺はしがない何でも屋です｣

美｢…ねぇ辰哉。今だけ、今晩だけは昔みたいに話してくれない？そうしたら…そうしたらきっと諦められるから｣

深｢…わかったよ。美雪｣

美｢ありがとう。

ねぇ、辰哉。私あの日からずっと考えてたの。今も。自分の命って誰かを犠牲にしてまで守られるべきなのかなって。王家と結婚するからって何？それが偉いの？

だったら…偉くなくてもいいから幸せに暮らしたいよ…

美春…どうして…｣

美雪の涙を拭おうとして手を止めた深澤もあの日のことを思い出していた。