白い息[KARASU] ページ4
朝6時より少し前、真冬の寒空の下、とある公園。
なぜ私はこんな時期のこんな時間から、凍えながら公園に立っているのか。
その答えは______
「お、おはよ」
そう声をかけてきたのはからすくん。
そう、彼と待ち合わせしていたから。ではなぜこんな時間から?なんと私、今日は彼の踊ってみた撮影のお手伝いをしに来ました!
カメラを回し、音楽を流すだけのお手伝い。Johnnyさんの都合が合わなかったけれど、複雑なカットが無く、単調なカメラワークなので私でもできるだろう、ということで任命していただきました!!
「それじゃ、撮影始めよか〜」
いつの間にか準備をしていたらしい。からすくんが着ているのはいつぞやの、オレンジのダッフルコートのような羽織もの。今日は明るめ曲で踊るのかなーと思いつつ、カメラを回し音楽をかける。
流れ始めたピアノのイントロ。予想していたものとは違う、ゆったりとした切ない歌詞。
踊るからすくんの顔も、切なげで、泣きそうな表情になっていく。指先までしっかりと気を遣った動き方。まるで頭の先から爪先まで、平均身長には届かない彼の全身から、感情が滲み出ているような。
綺麗。その一言に尽きると思った。
その後、数回のミスはあったものの、想定していたよりも早く撮影を終わることができた。
「お疲れ様〜!」
さっきまで踊っていたとはいえ指先は冷たいだろうから、と、温かい缶コーヒーを手渡す。
お、ありがと〜!と受けとり暖を取り始めるからすくん。視線の先には先程撮り終えた動画。
その眼差しは真剣で、やっぱりからすくんは格好いいなぁと思う。
動画を見終えたからすくんがはぁ、と息を吐いた。ダンスに納得いったのか、その頬は綻んでいる。寒さ故に吐いた息は白くなり、すぐに消えていった。
ほんの一瞬だったけど、昇り始めた太陽の光に照らされたからすくんと吐息はきらきら輝いて見えて、思わず目を奪われてしまった。
それに気付いたからすくんはニッと笑って、
「え?何、見惚れとったん?w」
からかうように言ってきた。
「…うん、そうだよ。踊ってる時も今も、からすくんが綺麗で格好良かったから」
と、素直に伝えてみた。一瞬の沈黙。
「…ふ、何やそれ。さ、寒いし早よ帰ろ」
からすくんはそう言って少しだけ笑って、カメラや音源を流すパソコンを片付けようと背を向ける。
その顔が赤いのは、きっと寒さだけのせいじゃないんじゃないかな。
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ゆうたそ(プロフ) - 蜂蜜檸檬さん» 毎日更新楽しみにさせて頂いています!こちらこそ、今後とも素敵な作品の更新よろしくお願いします!何時もありがとうございます (2020年4月16日 12時) (レス) id: 07d88f8b9a (このIDを非表示/違反報告)
蜂蜜檸檬(プロフ) - ゆうたそさん» コメント、並びにリクエストありがとうございます!なるほど、頑張ります!今後ともよろしくお願いします!! (2020年4月16日 9時) (レス) id: 51a61a1564 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうたそ(プロフ) - 初コメ失礼します!素敵な作品毎日楽しみにしてます!初コメで大変失礼なのですがリクエストさせてください。女の子が仕事でいっぱいいっぱになっている時の対応が読んでみたいです!もし似たようなものが既に投稿されていたら申し訳ありません。この作品が大好きです (2020年4月15日 20時) (レス) id: 07d88f8b9a (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - 蜂蜜檸檬さん» ありがとうございます(´;ω;`)私の作品まで読んでくださったとは・・・では紹介させていただきますね! (2020年4月13日 15時) (レス) id: 706433a930 (このIDを非表示/違反報告)
蜂蜜檸檬(プロフ) - 紅葉さん» コメントありがとうございます、飛び上がって喜んでます…!え、いいんですか紹介なんてして頂いて…!嬉しい限りです!むしろお願いしますって感じなので…!紅葉さんの短編集も読ませて頂きました。テンポが良く読んでいて楽しかったです!今後も更新が楽しみです! (2020年4月13日 12時) (レス) id: 51a61a1564 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蜂蜜檸檬 | 作成日時:2020年3月30日 19時