あなたのココロ、盗みます。【赤羽業】 (ページ20)

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『これがあたしの昔話。…昔って程でもないか』

「そんなこと、が…」

『有里も多分、死ぬのは誤算だったと思う』

焦った顔を見れた時は、凄くせいせいしたけど。
この顔を見るために姉が死んだのだと思うと、殺意が自然に湧いてきた

あたしはそっと、カルマに抱きしめられた

『かる、ま…？』

「辛かったよね」

『……う、んｯ』

「もう大丈夫だよ、俺達がいるから」

頭が無駄に冴えてるクセに、馬鹿みたいに素直に告げてくるカルマにやけに安心した。

この腕の中にずっといたくなる、このぬくもりをずっと感じていたくなる。

こんなに人の温度があたたかいなんて知ったのは初めてかもしれない。

『う、ぁっ…』

ポンポンと頭を撫でてくれるカルマ、その優しさに…あまえていた。

「羽元さん」

『どうしたの？』

「その…怪盗は、続けるの？」

コテっと首をかしげながら言う、あざとい、こいつあざといぞ

『分かんないな。続けたいけど…出来れば今は暗殺に集中したいネ』

「えっ、やめないの？」

『えっ』

真顔でいうカルマに思わず固まる、いやいやあたしの事はあたしが決めるのだ。カルマに流されてうなずく訳にはいかない。

「お姉さんの意志的にもやめた方がいいでしょ、こんな危ない事私の代で終わらせるって言ってたなら」

『……そ、だけど！』

「今のAは、怪盗をやって何か得られる？」

カルマの、なんでも見透かされそうな鋭い瞳が、瞳だけが…あたしは苦手だった。
恐怖を覚えたのだ、全く、我ながら情けない話だ

『……無い』

絞り出した答えは、"得られるものは何も無い"というものだった。これが1番理想に近い答えなのではないだろうか？

「じゃあ……これからは普通の暗殺者だね」

『元怪盗、だけどね』

「大丈夫、俺たちと一緒だ！」

「そうだよ～、うちは皆、暗殺者だからね！」

みんなが抱き寄ってくる中、そのぬくもりがあまりにもあたたかくて…少し怖かった。

こんな幸せ、いいのかな。

屋上で笑い合う中、あたしのペンダントの中のお姉ちゃんがより一層、表情豊かになった気がした。

……気がしただけだけども