『PSYCHO-PASS』シビュラに見放された執行官

♯29　監視官の仕事 ページ34

「まぁそんなに上司を虐めるな」

その時ふいに智己さんが声を掛けた。

「とっつぁん…」

「わりぃわりぃ遅くなって」

智己さんが定時に遅れるのは珍しいな…

「今日の宿直ってお嬢ちゃん？」

「あ…はい」

「昨日の今日で大変だねぇ。ともあれ人生やら意味やら…あんまり仕事を重苦しく考えなさんな」

いや…遅れた訳じゃない。

外でずっと会話を聞いていたんだ。

「執行官を現場まで連れて来て、後はサボったり逃げ出したり世間様にご迷惑がないようしっかり見張る。お嬢ちゃんの仕事はそれだけで充分なんだ」

遠回しに言ってるけど智己さんは…

「……それってつまり、[何も手出しをするな]…ってことですよね？」

そう答えた常森守監視官の顔はとても‥悲しそうに見えた。

「………まぁ平和な１日になるよう祈って……」

その時室内にシビュラからの伝達が放送される。

『エリアストレス上昇警報』

『足立区伊興グレイスヒル内部にて規定値超過のPHYCHO-PASSを計測』

『当直監視官は執行官を伴い直ちに現場へ急行して下さい』

「……言ってる側からこれかよ」

智己さんが溜め息混じりに呟く。

「まーオレらはシフト明けッスから頑張って」

あれ…？

そういや慎也さんが居ない今、同伴執行官は智己さんだけ？

それなら…

「慎也さんの分私が埋めましょうか？」

「うわ、一夜ちゃん頑張るね」

…やっぱりちょっと心配だもん。

「あ〜…そうだな。それじゃ霧原の嬢ちゃんに狡噛の穴を埋めてもらおうか」

「……さ、出勤だぜ監視官殿」

「え…」

そう言われた常守監視官は宜野座監視官のデスクを見た後、[私…ですか？]と言わんばかりの顔で戸惑っていた。

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