佰伍拾伍 ページ10
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「……私、本当に貴女のこと苦手で、今回を機に付き合い方をしっかり決めようって思ってたんですよ」
吹っ切れもせず向き合いもできない、中途半端な宙ぶらりんは、止めようと。
「けど、貴女が変わらないでいてくれたお陰で簡単でした」
結論は出た。
「私、ずっと前から……って言っても分かんないか、細かく言いますね。
入社して早々、休憩室でくっだらない武勇伝自慢げに話してた時から」
小中で二度も、同じ子をいじめて転校させたなんて云う馬鹿馬鹿しい話を。
「同僚を巻き込んで、私の教育係だった先輩に嫌がらせをし続けていた時から」
優しい人で、聡い人で、なまじ強かったばかりに私にはまるで一切悟らせてくれなくて。
公にして波風を立てるよりは、と新たな職を見つけてひっそりと去った。
「アンタは追い出したと思ってるかもしれないけど、違う。
あの人は見切りをつけたんだ」
耐え性のない私は、それに追従しただけで。
そのことで何処か後ろめたさを感じていたけど。
もう曇りは失せた。
「それすらも、アンタ達はケタケタ妖怪みたいに笑って話題に上げてたよな。
ずっと変わらない。今日でさえも」
尤もらしい理由を付けてあの男二人を呼んで、何をさせる気だったのだろう。
熱が頭まで上ってきて、顔が火照るのを感じながら。
結論を告げる。
そして最後通牒を。
「梢さん。 私は、アンタが大嫌いだ。
もう二度と、私に関わらないでくれ」
私の人生からは、退場してくれ。
最後の一言を告げて、背を向けた。
健悟はまだだろうか、とバッグからスマホを取り出そうとした時どんと誰かにぶつかってしまう。
衝撃でぐわんと視界が揺れた。
「あ、すぃません……」
「……大丈夫ですか?」
ん?
ピントの合った服は、色も形も見覚えがある。
しかも降ってきた声は耳に慣れたどころじゃない。
見上げた先の、
色素の薄い瞳。
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作者名:camellia* | 作成日時:2023年10月1日 16時