佰伍拾陸 ページ11
─
「……健悟」
「はい」
健悟。健悟。
「けんごぉぉぉぉぇぅぃぁぇぁ……」
「しっかりしてください、主に呂律」
「むり……」
一気に安堵が押し寄せてきて、そのままがばちょと身を委ねた。
ぎゅっと背中に腕を回して顔を寄せ、煙草や酒や料理の匂いでごちゃごちゃになっていた鼻腔を上書きする。
「……ス──────」
「吸わないでください。本当にどうしたんですかAさん」
「んー……」
「A……? 翠じゃなくて?」
「?」
まだ居たのかあの人。
気づいたらしい健悟が怪訝な視線を向ける。
「……この人は私の恋人の立原Aさんですが。
貴女が、Aさんが言っていた元職場の先輩の人ですか?」
「え、あ、はい。あ、貴方が立原さんの……?」
あ、目輝いてら。
まあそりゃそうなるだろうけど、今は二重に許さない。
コイツが目を付けられるのも、あの人が健悟を見てるのも。
背中に回した手に力を込めて、軽く引っ張った。
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作者名:camellia* | 作成日時:2023年10月1日 16時