佰肆拾漆 ページ2
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ヴー、ヴー
図書館から借りてきた本を整頓している最中にスマホが鳴った。
電話で、しかも見知らぬ番号だったので直ぐに拒否の方を叩いてベッドに放る。
しかし数秒後、またもや震えて同じ番号を映し出すスマホ。
もしかしたら登録してないだけで知ってる場所かも、と応答を押して耳に当てた。
「はい、もしもし立は」
『あー出たぁ! 良かったぁ、番号変えてなかったんだねぇ!』
「…………!!」
即座にスマホを壁に叩きつけたくなった。
『何で一回拒否ったのー?』
「……知らない番号だったので、迷惑電話かと思いまして」
迷惑電話の方が百っ倍マシだった。
「ご無沙汰してます、先輩……それで、何のご用件で?」
口調が崩れないように、一言一言を区切って話す。
『いやー、電話帳整理してたら立原さんの番号見つけたからさ、久しぶりに飲みにでも行きたいなーと思って! 行こうよ!』
「飲みに、ですか」
そのまま消去してくれれば良かったのに、とか、大体アンタとサシで飲んだことなんかねえだろ、とか頭の中を言葉が回る。
「すみません、今あんまり夜に外出するのは……ちょっと」
『え? 何、彼氏でも出来た?』
嘲りが含まれているように感じたのは被害妄想ではないはずだ。
私だって出来ると思ってなかったけど、今この人にそう言われると腹が立つ。
「…………いますよ、一応」
『えぇ!? あの立原さんに!?』
わざとらしい叫び声にうっぜー、と思いながら耳から少しスマホを離す。
『えー何それ……折角だし話聞かせてよ!』
したくもねえ。
「すみません最近少し忙しくて……またスケジュール都合ついたら連絡しますので」
『えー?』
「すいません、今も手が離せないので失礼しますね」
矢継ぎ早に並べ立てて、返事を聞く前に通話を切った。
スマホを枕に投げて、大きく、息を吐く。
「…………─────」
息をする。吸う。吐く。
大きく吸って、細切れに、嗚咽のように吐き出す。
安心できる匂いに包まれたくて、袖に顔を埋めてもう一度呼吸した。
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作者名:camellia* | 作成日時:2023年10月1日 16時