第27話 ページ29
この匂い、どこかで嗅いだことが──？
胸がとてもざわざわして、その場所へ一目散に走る。
少し走った先の他の木よりも大きい木の根元で誰かが倒れ込んでいた。
(血が、出てる……！)
胸のざわざわはこれだったんだ。
『あ、あの……大丈夫ですか……！？』
明らかに大丈夫ではないのにそう問いかけてしまった。
失敗してしまった。
先程買った手拭いを躊躇いなく差し出し、
『手拭いで止血してください…！』
「っ……ありがとう、ございます」
はぁ、はぁ。と肩を前後に揺らし苦しそうに息をする人は、見た所秀吉様の軍じゃない気がする。
大きなかさで顔が良く見えないが、左腕に何か鋭利なもので斬られたような傷があった。
先程からサラサラと聞こえる音はきっと近くに小川がある証明。もう1枚の手拭いもきっと汚れちゃうけど水に濡らして使おう。
＊＊＊＊＊＊＊
『…ふぅ、これできっと大丈夫だと思います…』
「ありがとうございます。お陰で随分楽になりました」
では。とかさの間から少し見えた顔は、とても整っていた気がする。
綺麗な猫目と、髪を高い位置で結っている青年。
薄紫色を最大限に薄めたようなそのキラキラした髪の毛は木漏れ日に反射して輝いていた。
どことなく自分と同じくらい髪の毛の色が薄いので、何となく親近感を感じてしまった。
いつの間にかおでこに滲んでいた汗を拭き取り、手拭いを取るために開いた風呂敷を閉じたその時だった。
「あれ？なんでここに俺のお嫁さんがいるの？」
秀吉様の声がした。
少しピリピリした様子の秀吉様。武具も付けていて、まるで戦の時のようだった。
『ちょっと綺麗な自然に誘われて…』
父上母上に似てか、私は物心ついた時から既に自然と触れ合っていた。外出許可は出なかったけれど、庭に植えてくれた花々を毎日水やりをして面倒を見ていたから、どうしても自然がある所には誘われてしまう。
「ははっ、ふらふら寄り道して迷子にならないでよ？あんたすぐいなくなりそう」
くしゃりと笑う秀吉様。
なんだか馬鹿にされたように聞こえるけれど、きっとそれは「心配」してくれてるような気がする。
そう思うのは私の自惚れですか？
いつの間にか近くに来ていた秀吉様が私の手を取り、風呂敷をもう片方の手で持って「じゃあ、帰ろう！」と微笑んだ。
『はい、秀吉様』
今日も色々なことがあったけれど、とても楽しい1日でした。
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マスラ - 初めまして！とても面白いです！続き楽しみにしています。更新頑張ってください！(*^_^*) (2019年2月9日 17時) (
レス) id: 9b6ae3d64f (このIDを非表示/違反報告)
奏琉斗 哀 - コメントありがとうございます。そうですよね、秀吉、私も好きです^^* (2018年10月20日 18時) (レス) id: ddcd85e1ba (このIDを非表示/違反報告)
奏琉斗 哀 - ニャン武士(^･x･^)さん» ありがとうございます。遅くなりますが、この後投稿させていただきます。 (2018年10月20日 18時) (レス) id: ddcd85e1ba (このIDを非表示/違反報告)
沖田総司 - キャー秀吉可愛い！ (2018年10月17日 23時) (レス) id: 61bbaa65c6 (このIDを非表示/違反報告)
ニャン武士(^･x･^) - 面白いです！更新頑張ってください！ (2018年10月11日 2時) (レス) id: 3f82ed1d40 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：奏琉斗 哀 | 作成日時：2018年9月22日 21時
