【無印イナイレ】その花は蝶の夢を見るか５ (ページ6)

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第14章─３話　勝利のためにページ6

そしていよいよ、戦いの幕が上がろうとしていた。

「雷門中、40年振りの出場でついにこの決勝戦まで登り詰めた！果たして優勝をもぎ取ることができるのでしょうか！」

実況が響き渡る。スタジアムは観客の歓声に満ちていた。

「いよいよ始まるんだな、決勝が！皆とこの場所に立てて、信じられないくらい嬉しいよ！」
円堂が皆にそう声をかける。

「俺、このメンバーでサッカーをして来れて本当によかった！皆が俺の力なんだ！」
そんな円堂の様子を見ていた夏未が口を開く。

「絶望的な状況なのにあの笑顔…凄いわね。マジン・ザ・ハンドを身につけることができなくても、世宇子中には自分の必殺技が通用しないって分かっていても…全然諦めていない」
「うん、今までと同じ…今、自分が出せる力の全てをぶつけて勝つつもりなの」

夏未の隣に立つ木野がそう答えた。そして2人は顔を見合せ、微笑み合う。

「さあ、まずはアップだ！」
円堂の合図で、皆はアップをするためにフィールドへと走って行った。その時、辺りを突風が走り抜けた。

「…何だ？」
円堂が風の起きた方へ視線を向けると、そこは世宇子中のベンチだった。世宇子中の選手たちの姿が見える。

「この大会最も注目を集めている世宇子イレブンだ！」
実況がそう声を上げる。どうやら彼らは突風と共に姿を現したようだ。

「決勝戦まで圧倒的な強さで勝ち続けてきた大本命！この決戦でもその力を見せつけるのか！」
「…世宇子中」
豪炎寺が呟く。するとその微かな呟きが耳に届いたのか、アフロディがこちらに視線を送った。彼はこの前と同様、どこか自信に溢れた笑みを浮かべている。

「さあ、間もなく試合開始です！」
雷門イレブンは円陣を組んだ。

「いいか皆！全力でぶつかれば何とかなる！勝とうぜ！」
「おー！」
その様子を見ていたAが、神妙な面持ちで呟く。

「…いよいよ始まるのね」
「ええ…」
彼女の隣に立つ音無も彼女と同様、不安そうな表情だ。するとどこからともなく金属音が聞こえてきた。

「？」
不思議な風貌をした男が、十数個の水の入ったコップが置かれたキッチンカートを引いて歩いていた。男が向かう先は、世宇子中だ。

「僕たちの…勝利に！」
そしてアフロディの合図で、彼らは皆一様にコップに入れられた水を飲み干した。

「チッ、余裕見せやがって…」
その様子を見ていた染岡が怪訝そうにそう言った。Aも眉間に皺を寄せながら、異様なその光景をまじまじと見つめるのだった。