【無印イナイレ】その花は蝶の夢を見るか５ (ページ3)

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第13章─14話　決闘前夜ページ3

病院からの帰り道。Aと鬼道はどこか安堵したような表情を浮かべていた。

「薊にわかってもらえてよかったな」
「ええ…安心した」
Aは胸を撫で下ろした。そして訪れる沈黙。

「いよいよ明日…全てが終わるのね」
「ああ…絶対に終わらせて見せる」
「思えばこれまで長かったわ…帝国にいた時からずっと、私は孤独に戦ってきた」
Aはこれまでのことを振り返る。影山に引き取られ、帝国に入学し、そして目の当たりにした残酷な真実。

「凄く辛かったけど、そのおかげであんなにも素敵な仲間たちの出会うことができて…本当によかった。それに、有人と春奈ともまた一緒になることができた」
そう言ってAは微笑む。その笑顔に鬼道はドキリとした。

「俺も…またお前と一緒になれてよかったよ」
「…有人からそんな言葉が聞ける日がくるなんて、夢みたい」
Aは照れくさそうに笑う。

「…私ね、あの日影山の手を取り彼の娘になったこと、ずっと後悔してたの…有人があんなことをしてるの、見たくなかったし知りたくなかった」
「………」
「知ることがなければ、お互いどこで何をしているかを知らなければよかったって…何度もそう思ったけど」
ふとAは立ち止まる。鬼道は少し先に進んでそれに気が付き、立ち止まって振り返った。

「どんな形であれ、嬉しかったの…有人とまた会えたこと」
「A…」
「家族を失って途方に暮れてた私に、サッカーの楽しさを思い出させてくれて、支えてくれたのは有人だったから」
「俺はそんな大したことは…」
「いいえ…私は有人が思ってるよりもずっと、あなたに救われたのよ。だからまた会えて嬉しかった」
暗闇の中街頭に照らされたAは、どこか悲しそうでどこか嬉しそうな表情だった。

「またこんなふうに有人と歩けて、本当によかった…本当に」
「………」
彼女のそんな様子に、鬼道はどこか決意を固めたような表情を浮かべる。

「A」
「…？」
「…そんな顔するな、俺はもうどこにも行かないから」
「！」
「ずっと雷門で、あいつらと一緒にサッカーするさ…俺がそうしたいんだ。Aが雷門にいる間ずっとな」
「有人…」
「俺も帝国で再会できた時は嬉しかった」
改めて口に出すと恥ずかしいな、と鬼道は笑った。

「ほんと、私たちには似合わないよね、こういうの」
そう言ってAも微笑む。彼女は心の中で、ゴーグルがなければ鬼道の表情がよく見れるのにな、と少し残念がっていたのだった。