【無印イナイレ】その花は蝶の夢を見るか５ (ページ20)

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番外編３─２　出会いページ20

渋々提案を受け入れた少年たち。去り際まで少女に疑いの籠った眼差しを向けた。

「ごめんねAさん、嫌な思いさせたね？」
「…平気」
「そう？鬼道くんもありがとう。私はゲーム機探してくるわ」

そして職員は去っていった。その背中にため息をつき、Aと呼ばれた少女もその場を去ろうとする。

「…あ、おい！」
その背中に、鬼道は思わず声をかけた。Aは立ち止まり、少し間をあけて口を開く。

「助けを頼んだ覚えはないわ」
「え？」
「礼が欲しかったんじゃないの？」
「いや、そうじゃないんだが…」
Aは振り返り、不思議そうにまた少し首を傾げた。なぜ声をかけたのか、鬼道自身にもわからなかった。

「助けたのは俺の意思だ、気にしないでくれ」
「…どうして？何の関わりもないのに」
「多分あいつらが気に入らなかったんだ。いてもたってもいられなくて」
「…多分って、自分のことじゃない」
変なの、とでも言いたげに少女は不思議そうな表情を浮かべる。

「…でも、おかげで痛い思いせずにすんだわ。ありが──」
「あ、危ない！」
Aが言いかけたその時、どこからともなく聞こえてきた叫び声と、何らかの飛来物。

「！」
鬼道が振り返った時、すでにその何かが目前に迫っていた。鬼道がそれをすばやく避けようとしたその時、彼の前に立ち塞がる影。

「なっ…！」
次の瞬間、その飛来物を鬼道の前にすばやく立ち塞がったAが勢いよく蹴り返した。

飛来物の正体はサッカーボールだった。Aが蹴り返したボールは完璧なコントロールで、サッカーをしていた集団の元へ飛んでいく。

「ごめんなさい！大丈夫だった？」
「ええ、特に問題は」
呆気にとられる鬼道には目もくれず、こちらに駆け寄り声をかけた少女にAはそう言った。少女は何度か謝り頭を下げ、集団の元へと帰っていった。

「危ないなぁ…ん？」
Aが振り返ると、ぼーっとこちらを見つめる鬼道と目が合う。

「…どうかした？」
「あんた、凄いコントロールだな…もしかしてサッカー経験者か？」
「…もうとっくにやめたわ」
そう言ってその場を立ち去ろうとするA。

「…なあ」
「…今度は何？」
「俺と…一緒にサッカーしないか？」

それが、少年と少女──鬼道とAの出会いだった。自身の行うゲームメイクを完璧にこなす者と出会った鬼道と、施設に来てから初めて友人ができたA。

その出会いがお互いの運命を変えたということに、その時の2人は知る由もない。