第14章─10話 前半終了 ページ13
「鬼瓦さんお願い、急いで…！」
祈るような口調で言いながら、Aたち4人はスタジアム内を走り抜ける。そして遂に、4人はフィールドへと戻ってきた。
「試合は？」
Aがスコアボードに目をやる。得点は0対3のままだ。しかしフィールドにいる雷門イレブンの皆はその場にぐったりと倒れ込んでいる。
「そんな…こんなことって…」
Aが呟く。
「限界だね…主審」
見かねたアフロディが口を開いた。
「試合続行不可能ということで、この試合、世宇子中の──」
「まだだ」
主審の言葉を、円堂が遮る。
「まだ…試合は終わってない！」
「しかし君だけでは──」
「そいつだけじゃない！」
主審にそう言ったのは、豪炎寺だ。
「そうだ！」
「まだまだ戦える！」
鬼道と一之瀬も、豪炎寺に続いて立ち上がる。他の雷門イレブンもそれに続いた。
「…信じられないという顔だな」
その様子を呆然と見ていたアフロディに、鬼道がそう声をかける。
「円堂は、何度でも何度でも立ち上がる。倒れる度に強くなる…お前は円堂の強さには敵わない！」
「…では試してみよう」
鬼道の言葉にそう答えると、アフロディは再びボールと共に天高く飛び上がった。
「アフロディ、ゴッドノウズの体勢！とどめを刺すつもりか！？」
「ゴッドノウズ！」
アフロディが実況の告げる通りゴッドノウズを放とうとした、その時。主審がホイッスルを響かせた。
「ここで前半終了だ！」
「…フッ。命拾いしたね、雷門中」
そう言いながら降り立つと、アフロディはサッとその場を去っていった。
「得点は3対0で世宇子リードだが、この点差以上に実力の差が開いていることは明らか！」
雷門イレブンはお互いの肩を支え合い、何とかベンチへと戻っていく。
「かなり消耗の激しい雷門だが、果たして後半を戦う力が残っているのか！」
「えっ、神のアクア？」
Aから話を聞いていた円堂が、そう叫んだ。
「ええ。恐らくその水こそ、世宇子の力の源…」
「体力増強のドリンク…！」
Aの言葉に鬼道がそう続ける。もしそれが事実であるならば、世宇子がしているのは紛うことなきドーピングだ。
「許せない…！サッカーを、俺たちの大好きなサッカーを、どこまで汚せば気が済むんだ！」
円堂が怒りを顕にしながらそう叫ぶ。雷門イレブンは皆彼と同じ気持ちだ。
「神のアクア…そんな物をサッカーに持ち込むなんて」
「…円堂くん」
夏未が円堂のユニフォームの袖を握った。彼女の表情は不安でいっぱい。
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作者名：紫苑 | 作成日時：2023年10月3日 0時
