第14章─９話 神々の秘密 ページ12
Aの言葉を受けて、音無はフィールドへ視線を向けた。
「まだ耐えられるのか？興味が湧いてきた…君がどこまで頑張れるか」
アフロディは円堂にそう言うと、チラリとベンチの方へ視線を送る。そしてなぜか、ボールを枠外へ蹴り出した。
「おっとアフロディ、ボールを外へ蹴り出した！ミスキックではない、これは意図的に蹴り出したのか？」
世宇子の選手たちは皆ベンチの方へと歩いて行く。するとアフロディたちは、先程と同様コップに注がれた水を飲み出したのだ。
「なんと世宇子中、余裕の水分補給だ！」
その様子を見ていたAが呟く。
「あれ、何か変だわ」
「ええ、いくらリードしているからって許せない！」
音無の言葉に、Aは首を横に振った。
「違うわ、全員同時に水分を摂っていることよ」
「確かに試合中の水分補給は重要だけど、試合の途中に全員がベンチへ戻ってだなんて、見たことがない」
Aの言葉に、木野も続けた。音無もそれに頷く。
「言われてみれば！」
「もしかしたら…皆ちょっと来て！」
Aはマネージャー3人を促し、とある場所へ移動する。目的地はこのスタジアム内にある、厳重に警備された部屋の前だった。
「気をつけて運べ、誰も中に入れるんじゃないぞ」
「はい」
謎の男が、謎の液体を運ぶ男と部屋の入口前に立つ警備員にそう言った。
その様子を、雷門マネージャーの4人は物陰から盗み見ていた。
「さっきのドリンクでしょうか？」
「恐らくね。きっとあれに秘密が──」
「羨ましいねぇ」
音無の言葉にそう言ったAの言葉を、警備員が遮った。
「私もあれを飲めば君より強くなれるのかねぇ」
「き、聞きました？」
「ええ。Aさんの言った通り、あのドリンクには秘密があるんだわ」
音無と夏未がそう言った。
するとその時、夏未の肩を何者かが叩いた。スタジアム内にマネージャー一同の悲鳴がこだまする。
「待てーっ！こいつらを捕まえてくれーっ！」
夏未の肩を叩いた人物は、部屋の入口に立つ警備員たちへそう叫んだ。
「まさか“神のアクア”！待てーっ！」
そう叫び、警備員たちが夏未たちの後を追う。それを肩を叩いた人物──鬼瓦が横目で見送った。
「刑事さん、大丈夫かしら…」
「あの人ならきっとやってくれるわ…！」
夏未の言葉にAがそう答える。先程夏未の肩を叩いたのは鬼瓦で、走って逃走するAたちは囮…部屋から人がいなくなったこの隙に、鬼瓦が世宇子中の秘密を突き止めるという算段だ。
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作者名：紫苑 | 作成日時：2023年10月3日 0時
