第１章─７話 可能性の証明 ページ8
「………」
円堂の言葉に、Aは僅かに目を見開いた。そして数秒の間の後、ゆっくりと口を開く。
「…なるほど、確かに一理あるわね。素敵な考えだと思うわ、それなら…証明して見せてよ」
「…え？」
「あなた達が帝国に打ち勝ち…可能性から逃げてはいけないということを、証明してくれるかしら」
「…ああ！見せてやるよ！」
「キャプテン、また無茶なことを…」
宍戸が呆れた、と言わんばかりの表情で呟く。気合十分の円堂を、Aは少し複雑な表情で見つめていた。
「さあ、後半戦のスタートです！圧倒的な帝国リードの前に、どう立ち向かうのか、雷門イレブン！」
「証明してもらうわよ…その考えが、間違っていないということを」
Aは立ち上がり、一歩前に出て後半戦が始まろうとしているフィールド全体を見渡した。彼女の長い髪が風に靡く。
「ねぇAさん、どうしてあんなこと聞いたの？勝算はあるのかって…」
木野の質問に、Aは少し考え込み、こう告げた。
「私は今まで何度も帝国の試合を見てきたわ。その中で帝国が負けたことは一度としてなかった。私には、試合が始まる前から…雷門が勝つ未来なんて想像も出来ないし、してもなかった」
「………」
「でも、今日なら…あるかもしれない。雷門が勝つ未来…帝国の負ける未来が」
「え…？」
「でも…まだ駄目ね。今はまだ…」
「…どういうことかしら」
「さ、さあ…」
木野に同意を求められ、音無は慌ててそう呟いた。不安そうな表情の音無は試合が再開されるまでずっと、Aの背中を見つめていた。
そして帝国からのキックオフで後半戦が始まる。
「行くぞ、デスゾーン開始」
鬼道のその合図で寺門、佐久間、洞面が走り出す。
「そしてヤツを…引きずり出せ！」
『デスゾーン！』
3人によって放たれた必殺シュート、デスゾーンは一直線に円堂を狙う。反応する隙もなく、円堂は顔面にデスゾーンを喰らってしまった。
「続けろ！ヤツをあぶり出すまで！」
「………」
鬼道のその一言に、Aは表情を酷く曇らせた。
その後帝国の勢いは留まることを知らず、点差はどんどん開いていくばかりだ。雷門は為す術なく、帝国に痛めつけられていた。
「出てこいよ、さもなければアイツを…」
「叩きのめす！」
鬼道の言葉に続いて寺門がそう叫び、ゴールに立つ円堂めがけ勢いよくシュートを放つ。それを皮切りに、帝国は円堂へ向け何度も執拗にシュートを放ち始めた。
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作者名：紫苑 | 作成日時：2023年2月19日 1時
